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第1話
夜の帳に銀色の髪とホワイトムスクの香りを靡かせる。
すれ違う誰もが私の方を振り向くわ。
シルバーのラメの入ったマーメイドドレスを翻して、たまにアッシュグレーの瞳で流し目を送ってあげるの。
ウフフ、みんな赤くなっちゃってかーわいい。
でもアタシ可愛い男の子に虐められるのが好きなのよね。
どっかにかわいくてSっ気のある男の子落ちていないかしら。
「それやったら『苔庭のイタチ亭』のスカイなんかええんちゃう?」
アタシの勤めるお店ーニューハーフバー『ミモザ』で、カモミールが麦酒をのみながら言ったわ。あ、そうそうアタシ男なのよ。
昼間は普通に男性としてギルドで働いているわ。
常連客のカモミールはヒョウ柄のワンピースに黒い毛皮のコートにプリン頭の金髪なんて町医者に見えない派手な風貌だけど、顔が凄く美人だからゴージャスに見えるの。エルフってみんな美形で得よね。
つやのある樫材のカウンターテーブルに岩石豚の生ハムを置きながら話の続きをせがむと、スカイくんのことを教えてくれたわ。
「かわいい顔したネコの獣人の子でな、確かバリタチや言うとったで」
やだそれめちゃくちゃ好みのタイプじゃない。
「シルキー、いっぺん連れてったろか?」
さっすがカモミールね、みんなから姐さんって呼ばれているだけあるわ。
お店の定休日、カモミールと『苔庭のイタチ亭』に行ったわ。もちろん淑女の出で立ちでね。
「あ、ほら、おったで。スカイー、麦酒2つな」
はわわわわわわストラアアアアイクッッッ!!!!
え、何この子かわいすぎじゃない?!
金髪に黒い猫耳にちょっとキツめなかわいいお顔ってもうど真ん中よ!
はっ、やだこっち見た!
「アンタが女連れてくるの珍しいな」
あああああああありがとうございますっ!
少年なプリティボイスを!
「ちゃうでスカイ、シルキーはオカマちゃんやねん」
「えっ男?」
ビックリして目がまん丸になってホント猫ちゃんみたいね。
「ハア・・・かわいい・・・」
思わずそう漏らせば、ちょっと吊り目で大きなお目々を絞って
「オレのこと、かわいいって言ったら嬲るから」
ハイ、落ちました。
心臓撃ち抜かれて昇天しました。アアアアアアアア鼻血でそーーー!!
え、やだこの子天使?いや小悪魔?
アタシのハートをあっという間に掻っ攫ってったわよ。
だからもうね、しょうがないわよね。
ここの常連客になったって。
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