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第44話
家に着いて玄関からリビングへ行く。一軒家だが古い家だ。誠也が産まれる前に建っていた家を中古で買ったんだと聞いた。
「お帰りなさい。夕食はロールキャベツを作ったの」
「ああ、わりい。お昼はお握りだったから腹減ったよ」
「言えば、お弁当くらい作ってあげるのに」
「いや、今日は忙しかっただけだ」
男の子とラブホテルなんかにいたと知ったらお母さんは卒倒するだろう。誠也はカシミアのコートをソファーの背に掛けてテレビを点けた。ソファーにお尻を置く。お母さんが眉間に皺を寄せた。
「スーツが皺になっちゃう。着替えてくれば?」
「ああ、そうだな」
2階に上ってトレーナーにデニムをはいて来てから、またソファーに腰かけた。その時ピンポンとLINEが来た音がした。春陽くんからだと思って急いで見ると、さっき会った早紀ちゃんからだ。
「誠也くん、家に着いた?」
「着いたよ、早紀ちゃんも着いたかな?」
「うん、画像送るね」
その後、撮ったばかりの画像が送られて来た。お母さんは後ろから覗き込んで「彼女?」と訊いて来た。早紀ちゃんを彼女だってことにしておけば、お母さんも安心だろう。
「彼女みたいなもん」
誠也はそう言って誤魔化すと「ロールキャベツ食おうよ」と言った。
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