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第55話
土曜日になってお父さんが入院している病院に1人で行く。お父さんは救急治療室から出て個室に入っている。部屋の中に入ると消毒薬みたいな匂いがして、ピー、ピー、ピー、と心電図と点滴の機械が鳴っていた。
「お父さん、来たよ、分かるか?」
返事がないことは百も承知だが誠也は訊いた。今は昼の1時だ。今日は面会時間が始まって直ぐに来た。春陽くんは2時頃になったら来ると言っていた。お父さん、意識を取り戻したらビックリするだろうな。友達だって紹介しよう。誠也はお昼を食べないで出て来た。花見をするんだからコンビニでアルコールとサンドウィッチなんかを買ってもいいし、なにかつまみを買えばお腹は膨れる。そう考えているときLINEが鳴った。
「誠也、少し早いけど病院に着いた。何号室だっけ?」
「ああ、入口まで迎えに行く、休日しか開いてない救急の入口があるんだ」
「わりいな」
誠也はお父さんの頬に掌をあてて「友達が来る。驚くなよ」と言った。
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