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第54話

 お昼休みに春陽くんからLINEが来た。日曜日はホストクラブが休みだからまた埼玉県に来るんだという。誠也は日曜日はお母さんの代わりにお父さんが入院している病院に行こうと思っているので断りを入れた。 「俺もお父さんのお見舞いに行くよ」 「お父さん、意識ないんだ、来て貰ってもお父さんには分からないよ」  分かったら逆に困るんだが、誠也はそう返信を打った。 「誠也に会いたいんだ。俺さ、病気になったみたい」 「どうした?」 「毎晩、お前のこと考えると苦しくなるんだ」  そうか。誠也は「俺もだよ」とメッセージを打とうと思ったが踏みとどまった。あまり、この恋にのめり込んだらいけない。でも自分の気持ちに忠実に生きたほうがいいような気もする。 「分かった、一緒に病院に行こう。病院の傍に川があって、河津桜が咲いているんだ。梅の花もまだ咲いてる。ちょっと早いが花見をしよう」  誠也はメッセージを打つと、今、手掛けている原宿に建つ美容院の図面を書いた。完成したら付き合いで行ってもいいな。春陽も連れていってあげようか。今度こそタピオカを食べてみたい。誠也はニヤニヤそう思って図面を書き進めた。

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