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①
果たして、何度目になるだろう。
同じ病院で生まれ、家は隣、小学校から大学まで同じ学び舎で学んだ。紛うことない、幼馴染。
そんな幼馴染である立夏は俺の好きな人をことごとく落としていくのだ。俺が告白する前に立夏に好きな人が告白をする。俺が幼稚園の頃から経験してきた恐ろしい真実だ。
それでも、一度だけ中学2年の時に彼女が出来た。部活の時に出会った他校の女の子。その子は立夏を知らない。知らなければ、立夏に取られない。俺はルンルン気分だった。
ただ、残念なことに俺の家に招待したときに立夏にばったり遭遇。立夏を見た彼女は目をハートにさせた。それでその後は…、知らないうちに立夏に恋に落ちた彼女は俺を振って、立夏の元へと行ってしまった。因みに、立夏は彼女を振ったらしい。
そういう訳で、俺は立夏にことごとく恋の邪魔をされている。可哀想な俺。
んで、大学2年の夏。
またしても一目惚れしてアタックし続けていた女の子を難なく立夏は攻略し、告白を受けていた。←今ここ
ショックのあまり、飲み明かそうと知り合いの営むBARに立ち寄った。因みにもう誕生日は迎えている。安心して欲しい。
バーテンダーのランカさん。この人は母親の友人の弟である。母はここの常連で、俺もたまに来ている。こんな情けない話は家族はもちろん友人にもできない。だから、話を聞いてもらうのにちょうどいいのがランカさんなのだ。
因みにランカさんは男だ。オネエだ。いい感じの筋肉ついているけど、中身は女性だ。
「で?また取られたの?好きな人。」
俺はすでに涙目だ。
「俺、どうすればいいの?だって、だって、立夏に全部取られてくっ‼︎俺があんなに頑張って落とそうとしたのに、1日で落としやがった‼︎俺、これじゃあ結婚どころか恋人も作れない…。」
仮に恋人が作れたとしても…。立夏に会った途端に持ってかれてしまう。うぁぁぁん。
「それなら、立夏君に絶対に落とされない人を選べばいいんじゃない?」
「立夏に落とされない人なんていないよ‼︎」
「あら?いやぁね。いるじゃない。」
「だれ?」
「お・と・こ」
男…、男…、男か…。男⁉︎
「なんでだよ‼︎」
「ああ、でも私みたいなのはダメよ。イケメン大好物だもの。そうね、あなたから聞く立夏君のイメージだと絶対にネコにはならなさそうだから。タチ役の彼を探しなさい。まぁ、平凡顔だけど愛嬌はあるし受け入れてくれる人はきっといるわ。」
「だから、なんでだよ‼︎つ、つまり俺がお前みたいになるってことだろ‼︎」
想像する自分の女装姿。うぇぇぇ。
「偏見よ、それ。それに私のは趣味よ。馬鹿にしてるの?」
素晴らしく鋭い目つきで睨まれ、精一杯頭を横に振る。
「はぁ、でも、このままだと本当に恋人なんて作れっこないわ。それなら、満を辞して、男を捨てた方がいいんじゃない?それに、案外気持ちいいかもよ。」
た、確かに。一生恋人ができないのはいやだ。もう、諦めて男に走った方がいいのか?でも、なんかその道行っていいのかな?でも…。
「まぁ、ゆっくり考えなさい。」
うーん、うーんと唸る。でも、立夏を好きにならない恋人か…。魅力的じゃないか?
「ねぇ、俺が君の恋人になってあげようか?」
「へ?」
誰だ?こいつ。いまだに考えが纏まっていない時、隣の隣の席に座っている男に話しかけられた。茶髪の上品そうな大人だ。まぁ、言うてそんなに歳は離れていないとは思うけど。
「なんでイケメンなあんたが俺と恋人になってくれるの?」
「それは、君に一目惚れしたからだよ。」
「あっ、まさかこれぞまさしく、初物食い好き?」
「初物食い好き?何それ。ああ、処女が好きってこと?それは違うよ。本当に君に一目惚れしただけ。」
「うーん…。」
怪しすぎる。自分で言いたくはないけど俺は平凡顔だぞ。ガチの平凡だぞ。the平凡だぞ。ああ、もしくは平凡好きか‼︎平凡好きってなんだ?
「皐月君、翔也君なら大丈夫よ。古い仲だから、悪い人じゃないことは断言できるわ。男と出会うことないんだし、一夜だけ共に過ごしてみたら?」
まぁ、俺なんかを恋人にしてくれる人がこの先現れるとも言い難い。しかし、こんな簡単に決めていいのか?そもそも、ランカさんの古い仲って…
「はっ‼︎俺はランカさんの兄弟?姉妹?になるつもりはない‼︎」
「兄弟?姉妹?…ってああ、違うわよ。私達はただの友達。大人の関係になったことはないわ。皐月君も知ってるでしょ?私には彼氏がいるんだから。」
もうっ‼︎とぷりぷり怒っているが、そこまで怖くない。睨んでこないってことはその勘違いはそこまで不快ではなかったようだ。
「それで?返事は?」
10分間、グラスを持って考える。グラスの中身を全て飲み干して、コクリと頷いた。
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