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「それで?どっちを選んだの?立夏くん?それとも翔也さん?」
久々に訪れたランカさんの店で酒を飲みながら俺は尋問を受ける。カウンターから乗り出すランカさんをドウドウと抑えながら、俺はあの夜のことを思い出した。
ーーー
「俺、俺…。やっぱり女の子と付き合いたい‼︎」
「は?」
「え?」
「そもそもなんで男に走ろうとしたのかさっぱりなんだよな。俺、立夏に惚れない女の子を探そうと思ってたはずだったんだよ。だから、男と付き合うのってやっぱり違うなって。」
俺は精一杯女の子と付き合いたいんだよーっていう意思表示をした。そしたら、立夏も翔也さんも驚愕というよりも呆れたような顔をした。俺からしてみればなんでそんな顔されないといけないのかさっぱりわからない。
「今更その問題定義をするのか、お前は。」
「流石にそれで断られるとは思わなかったよ。いや、可能性は充分あって考慮しなければならなかったけど。まさか、こうなるとは。」
「これは、一時休戦ということにしないですか。このアホをどうにかしてからでも遅くはないでしょう。」
「それは…そうだね。こんなんで断られても納得して諦めようなんて思えないからね。」
どうやら目の前で何か恐ろしい同盟が組まれた気がする。
ーーー
「あんた、酷い男ね。まさかここまで来て女の子がやっぱりいいなんて。最低よ、最低。そもそも立夏くんに女の子全部持ってかれるから男に走ろうとしたんでしょ?それを今更…。」
やれやれとランカさんにまで呆れられた。俺にとっては重要なことじゃい‼︎
「もう‼︎それは立夏にあり得ないくらいぐちぐち言われたから言わないで‼︎」
「それで?その後は?」
「その後?そのあとは…。」
ーーー
無事に何事もなかったかのように家に帰った俺だったが次の日から恐ろしい事が起こった。
まず、立夏の家に行ったら昼ドラを永遠と見せられた。女の醜い争いが行われていた。
ヒィィィと思いながら立夏の部屋で漫画読んでたらBLだった。とても純愛だった。
そのあと、立夏に女と付き合うことの本当の意味を教わった。どうやら女の子と付き合うにはセックスを自分から手際良くしなければならないらしい。あと、あそこが小さいと嫌われるらしい。
「お前は小さいうえに童貞だろ?女に嫌われる要素盛り沢山だな。」
雷が落ちた。まさかそんなところまで考えないといけないとは。
「いやいや、でも‼︎これから大きくなるかもしれないし…。」
「お前、知らないのか。この年になったら大きくならないし、何より20歳超えて童貞・非処女になったものは女と一生抱き合えない体になるって噂だぞ。」
ひぇぇぇぇ
ってな感じで女の恐ろしさを知ったうえ、一生女の子と抱き合えない呪いにかかってしまったという事が判明した。
心身共に疲労した俺は翔也さんにたまたま偶然道端で会った。相変わらず、スマートなイケメンだった。
でも、また俺は恐ろしいことを知る羽目になる。
実はあれから女を好きになろうと思い、大学で女の子をジッと見つめていたら気になる子を見つけた。(※女の子を抱けない身体になったことを知る前)
言わば一目惚れだ。ほう…と見ていたあの子。立夏に恐ろしいことを教わってから近寄ることは出来なかったが、ずっとお知り合いになりたかった。
が、しかし、翔也さんと歩いていたらその子が現れいきなり翔也さんに告白したのだ。
「あ、あのっ…駅で助けてもらった者です。わた、私、す、好きです。付き合ってください‼︎」
呆然。
驚愕。
困惑。
のちに発狂。
どこでどう出会ったのか知らないが、まさか立夏以外に俺の好きな人を取るような人間がいるとは…。
あれ?俺、立夏だけじゃなく翔也さんにまで女を取られなければならないのか。
立夏1人ならまだ立ち向かえる。だが、まさか翔也さんまで…。
「皐月くん、なんかごめんね。さっきの子知り合いだったのかな?」
「いや、仕方ないですよね。立夏も翔也さんもイケメンだし。俺、もう女の子と付き合えないのかな。」
「性別なんて小さな問題に過ぎないよ。同性同士の恋人は確かに今の世の中だったら珍しいかもしれない。だけど、それを可笑しいだなんて嘲笑う人間はそれこそ人間として可笑しいんだ。
皐月くんは同性同士のカップルを見て笑うのかい?」
「笑いません。」
「それが答えだよ。女の人と付き合えないなら男と付き合う。至極真っ当な考え方だ。それを否定できる人はどこにもいない。」
「そっか…。」
「もう一度考え直したらどうかな?」
ーーー
「それで?あなたの今の気持ちはなんなの?」
「俺、いいのかなって…。男も女も別にそんなの気にせずに恋愛してもいいのかなって…。」
「あら、やっぱりいいように説得されちゃったってわけね。あなた、詐欺には気をつけなさい。まっ、立夏くんも翔也さんもいるわけだし大丈夫ね。で?どっちにするの?」
「どっちって、どっちも…。んぐぐぐぐ。」
悩みの種は相変わらず。2人とも好きなわけで…。
「もう2人と付き合ったらどう?1人や2人恋人いたっていいじゃない。」
「はっ、なるほど。それ、いい案‼︎2人に言ってくる〜‼︎」
俺が立ち去ったBARでランカさんはポツリと呟いた。
「………冗談に決まってるじゃないの。まぁ、いいわよね。最終的にそうなりそうな気がするし。2人ともご愁傷様。」
そんな感じで、ランカさんの冗談に乗っかってしまった俺は最終的に2人と仲良く付き合ったとかなんとか。
それで、え?俺、2人と付き合うなんて最低じゃね?みたいな感じのことをまたふと考えた俺が、一悶着二悶着起こすのはまた別のお話。
「いや、皐月ってアホだから仕方ない。」
「皐月くんだからまぁ、そうだね。」
アホの子の夜 完
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