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ふと、格子窓から差し込む夕陽がとても綺麗だったことを思い出した。
いつだったか定かではないほど、遠い昔。
自分に与えられた猶予は三年。それを短いとも感じないほどには従順に飼い慣らされていると思う。
『ある程度、普通の恋愛をしなさい』
冷たく無責任に言い放って送り出した女性の面差しは、今でも鮮明に覚えている。
―――普通、とは。
彼女が何を考えていたかは分からないけれど。
少なくともその言いつけだけは、唯一守ることができずに。
時が来れば大人しく籠の中へ戻ると。
そう、信じて疑わなかった。
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