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25.

学校へ登校する、いつもと変わらぬ朝。 教室までたどり着けば、待っていたのは。 「おはよう」 「…宏、」 常ならば無表情の西が、複雑な顔をしている。昨日の今日でどうしたことかと首を傾げた。 「…放課後、家で話さないか」 「今、ここでじゃ駄目かい?」 間髪入れずに返答を放てば、眉間に皺が刻まれる。怯んでしまっては負けだ、と自分に言い聞かせてぐっと息を詰めた。 家に行けば――と、いうより行きたくない気持ちが正直なところ。 「……メッセージを見てもいない奴に選択肢は与えられないと思うが」 「え?」 にべもなく言い切った彼に首を傾げる。なんのことだと目で問うてもため息が返ってくるばかり。これはこちらの分が悪いだろう。 恐らく、十中八九…先日の件だ。 彼の家へ足を踏み入れてしまえば、色々と思い出すことは確実で。 月明かりの差す部屋。微かに響く健やかな寝息を耳に、夢うつつで引き寄せた逞しい首筋。触れた柔い感触は、今までのどれよりも熱く胸を締めつけるものだった。 「…分かった。お邪魔しようか」 ひとつ、ため息をついて是を告げた。何を言われるか分からない。 けれど、また話せる。彼の傍でひとときの時間を過ごせる。それだけで充分だ。 意図せず撒いた餌にかかってくれたことが嬉しくもあり、そんな考えの浅ましさに嫌気も差した。

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