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第6話

「すごい、十二年前と変わらない」  掘り起こした薄い円形の青い缶。表面は少し錆び付き、クッキーの写真のプリントが薄れている。 「開けるぞ」  鴻はそう言ってそっと指を蓋の縁に添える。俺はそれを見守り、開いた瞬間その中を覗き込んだ。 「あ、俺の気に入ってたシャーペン」 「これ、覚えてるか? レアカード」 「気に入りだった栞だ」 「やべえ、未開封の飴入ってる」  俺達は数少ない思い出の品々を手に取って行く。傍から見たらがらくたでも、宝物はやはりなんだかんだと宝物らしい。俺は自身の入れた栞やペンを取り出した、久々の対面に胸が躍るのを感じた。  そして最後に残った二枚の封筒。  一通目には俺の文字で「鴻へ」と、書かれており、取り出した二通目には、彼の文字で「和希へ」と書かれている。  十二年後のお互いへ書いた手紙だ。 「何書いたか覚えてる?」  手紙を差し出されて、俺は躊躇ってから受け取った。 「覚えてる。鴻は?」 「覚えてるよ」  俺達は立ち上がると、すうっと冷めていく興奮を横目にベンチへと移動した。  十二月三十一日という最後の日でもあり、通りを歩く人は遠くに見えるけれど、俺達の存在は気付かれていないようだ。俺は人波を眺めてから、ゆっくりと白い封筒から、一枚の手紙を取り出し、開いた。  何が書かれているのか、期待と不安と、恐怖が胸を締め付ける。

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