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第一章・弦先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください!

 私立鳴矢(なるや)高等学校……から500mほど離れた、男子寮。    その一室。  小さいながらも室内は掃除手入れが行き届いており、花瓶に花など生けて飾ってある。  住まいの主は、繊細な心の持ち主らしいことがうかがえる。  だが、その繊細な心の持ち主は今、それをかなぐり捨てて声を限りに叫んでいた。 「弦(げん)先輩! お風呂から上がったらパンツくらい穿いてください! 何度も言ってるでしょ、もう!」  そう怒鳴って、河島 千尋(かわしま ちひろ)は同居人の先輩、海江田 弦(かいえだ げん)に向かってトランクスを投げつけた。  しかし、はなからキャッチする気などない弦は、全裸のまま腰に手を当て紙パックに直接口を当ててのんきに牛乳をぐいぐい飲んでいるのだ。 「風呂上りは暑いんだ」 「エアコン入れてるでしょう!?」 「細かいことにうるさいぞ、千尋。男同士なんだから別にかまわないだろう」

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