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第一章・8

「海江田クン、おはよ!」  人懐っこい女子の声。  クラスで一番明るい、坂井(さかい)だ。  こいつだけは、俺に声をかける。  いや、クラス全員に声をかけるのだから特別ではないか。 「何か言うことない?」  いつもなら、おはよう、だけで終わる坂井が珍しく身を乗り出してくる。 「別に」  特に言うことも思いつかない。  そんな弦に、坂井が非難の言葉を浴びせる前に、後ろから裏返った声が響いた。

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