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第一章・10

 本気を出せば相手が死んでしまうので、弦はひどく手加減して一限目の柔道を過ごした。  途中からそんな弦を気遣ってくれたのか、体育教師が自ら相手になってくれたので退屈はせずにすんだ。  元国体の柔道選手だった、という教師の技を受けるのは面白く、これは実戦に活かせそうだと物騒な手ごたえを感じていた。  そして、腹が減った。  さっそく千尋がこしらえてくれたおむすびを食べようと、弦はバッグに手を入れた。 「ん?」  入っているのは、昼用の弁当と。 「これは、千尋の弁当箱じゃないか」  いつものおむすびの包みではなく、千尋の弁当箱が入っている。 「あいつ、間違えたな」  さすがに後輩の弁当を平らげてしまうほどあくどい先輩ではないつもりなので、弁当箱を持って教室を出た。    おそらく、千尋のバッグの方に早弁用のおむすびが入っているに違いない。

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