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第二章・28

 優しいな、弦先輩。    だけど、その優しさに触れることができるのは、これが最後かもしれない、とうなだれた。    女装なんて、恥ずかしい格好を見られてしまった。  寮を追い出されてしまうかもしれない。  泣くまいと思っても、涙がにじんできてしまう。  せっかく、先輩と一緒に暮らせるようになったのに。  ぽろり、と涙が一粒こぼれたところに、弦がリビングへと起き出してきた。 「千尋」  あぁ、弦先輩。お願い、この部屋から、追い出さないで。  そこに、伸ばされてきた腕。  手を離すと、テーブルの上に赤い小鳥のストラップがころんと現れた。 「もらってきてやったぞ、鳥の人形」 「先輩」  涙が、嬉し涙に変わる。 「先輩、ありがとう!」 「泣くほど嬉しいのか?」  やだな、と涙を拭いて、ごまかすように千尋は明るい声をたてた。

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