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第八章・7

 特訓をしながら、千尋は新鮮な喜びを味わっていた。  いつも無口で鷹揚に構えている弦が、細やかな気配りで自分に接してくれるのだ。  しかもそのような気遣いは特訓の時間だけにとどまらず、日常の端々にも表れ始めた。  食事を終えると食器を下げてくれたり、進んでお茶を入れてくれたり。 (これって、すごく嬉しいな♪)  なんだか顔つきも、立ち居振る舞いまでも、穏やかになった気がする。  ギラギラとした野性味あふれる弦もいいが、こんな優しい姿もまた素敵だ。  心の中で坂井に感謝しながら、千尋は毎日楽しく弦の訓練に付き合った。

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