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第9話
…………そう、あれは俺が大学に入学したばかりの頃だった。…………
それまで俺は誰とも付き合った事はなかったが、普通に女子が好きな大学生だった。
そこに毅が現れた。
大学の同じ授業で俺の隣に毅が座ったことがきっかけで友達になった。
どこのサークルにも入っていなかったから、毅に誘われるまま映画研究会に入った。
毅は明るくて親切だから当然大学で女子の間では人気があって、そんな凄いやつと友達になれて凄く嬉しかった。
サークルで気になる女の子がいたけど、俺には告白する勇気が無くて…ただ彼女を見ているだけで幸せだった。
「………俊介、お前のこと好きなんだ。俺と付き合ってくれ。」
キャンパスで人気のない場所に誘われ、毅に告白された。
毅はモテるのに男同士で付き合うなんて何を考えているんだよ。正気なのか?!
俺は驚きのあまりにいろいろ考えて言葉に詰まる。
だが、すぐに思い当たった。
この前サークル勧誘用に流す映画のサンプル映像を何にしようかと言っていたな。
このドッキリ撮影の事なのか。
「ふーーー 毅、このドッキリ面白くないよ? もっとちゃんとした映画取ろうよ。」
「なっ!俊介っ!ドッキリとかじゃないからっ!!」
迫真の演技に関心する。
「すごいなぁ、次の主役は毅だね。ほら、みんなももうおしまい。早く行かないと遅刻するよー。」
周りに声をかけて、さっさと教室に向かった。
男同士で付き合うなんてモテない俺をからかう冗談でも質が悪い。
少し毅に怒っていた。
だけど毅のその冗談は毎日毎日会うたびにしつこくなってきた。
教室だろうとサークルだろうと所構わず俺を口説いてくる。
トイレにまでついてきて離れない。
「その冗談もう聞き飽きたよ。」
「冗談なんかじゃない。俺は本気だ。本気でお前の事……」
「毅!あんまりしつこいと友達やめるぞ。」
「そんなの嫌だ!頼む!俺と付き合って下さい。」
俺の足元に土下座をして頼み込むようになってしまった。
「何やってんだよ。トイレで土下座なんかやめてくれよ。」
「土下座くらいなんでもない。お前が付き合ってくれるまでなんだってする!!俺にはお前しかいないんだ。」
毎日熱烈に毅に口説かれ続けていたら、こんなに俺のことを好きになってくれる人は二度と現れないんじゃないかって思えてきて………
「……………………毅、もう土下座くれよ。」
「お前が付き合うと言うまでやめないっ!」
「……俺達、付き合おう。だから土下座は……」
「本当かっ!!俊介っ!やったーーーーっ!!」
とうとう根負けした形で毅と付き合うことになった。
だけど俺はそれまで大人の恋愛なんか一度もした事が無かったし、ましてや男同士が付き合うって事がどう言う事か良く分かっていなかった。
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