頭を抱えて大パニックになっている俺の隣に中島は腰を掛けた。 「先生、今日　どこかデートに行きましょう。」 デ、デートぉ？　まずいっ！　何とかしないと。 「あのな…俺…昨日…お前と……その……………したのか？」 いや、間違いなくしているんだと思うが……記憶がないから聞くしかない。 中島の表情から笑顔が消えた。 「酷い……覚えてないんですか？」 「いや、あの………すみません。」 まるっきり覚えていないです… 中島は俯いたまましゃべり始めた。 「…昨日は酔っ払った先生をタクシーでマンションの前まで送りました。タクシーを降りると先生は一人で歩けなくなっていたから、俺がここに連れて…」 「わーーーっ！もういい！」 その話の続きを聞くのが怖くて中島の言葉を遮った。 こんな状態になっているんだから、内容は大体想像がつく。 中島は普通の男子高校生で演劇部の部長の岡田と付き合っているんだぞ。 それなのに酔っ払った俺が襲って……中島を汚してしまった。 「悪かった。こんな酷い目にあわせて…本当にゴメン…」 「本当に酷いです。」 「………」 返す言葉もない。 どうやって謝ればいいのか分からない。 「付き合って初めて愛し合ったんですよ？それを覚えていないなんて…本当にショックです。」 ……………？ 「これからは絶対忘れないで下さい。」 「………え…………付き合っ…？」 頭が混乱して中島が何を言っているのか理解できない。 「年下の俺が恋人じゃ不安だと思いますが………」 「待て！」 中島が俺の恋人だって？！記憶が抜け落ちている間にどうしてそうなったんだ？！ 「恋人って……本当なのか？……」 「！　その事も忘れているんですか？！」 忘れていると言うより記憶にないんだよ～～～。 「嘘……」 中島はかなりショックみたいだ。 「俺との事よりも、お前は岡田と付き合っているんだろう？　こんなこと言えた立場じゃないけれど…」 これは自分で言っていて辛い言葉……でも… 「昨夜のことは………その…とにかく、岡田の事を大切にしてあげなくちゃだめだ。」 岡田から中島をこんな形で奪うなんて酷い事、出来ないよ。 「岡田とは付き合ってません。」 即答?! 「………………ええええーーーーっ!!　だってお前　毎日岡田と…」 中島は大きく一呼吸してはっきりと言い切った。 「もう一度言います。岡田とは付き合ってません。彼女の事は忘れてください。」 「忘れて下さいってお前…」 「それよりも、もっと大事な話があるでしょう?!」 「…………はい……」 …そうでした…… 「………先生は昨夜　俺の恋人になるって言いました。」 「えっ！　俺が告白したの???」 恋人に振られたその日のうちに告って生徒を襲うって……俺っ、マジでそんなことした自分が信じられないっ。 酒って怖いっ。もう絶対飲むのやめよう。 「やっぱり酔っていたから、その事も記憶されていないんですね。不安だったので一応携帯に録音しておいて良かった。聞きますか？」 中島は枕元にあった携帯電話を手に取った。 え゛っ!!