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愛の形〈語り・紫音〉

俺にはかなり年上の恋人がいる。 名前は古居龍煌。 大好きな恋人だ。 出会いは毎日乗る電車だった。 付き合い出したのは去年の秋頃。 告白は龍煌からだった。 年の差は“十七歳” 母親と変わらない歳だけど 俺達は恋に落ちた。 *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~ 「母さんね、 再婚しようと思うの」 恋人いたのか。 「いいんじゃないか?」 母さんだってまだ若いんだし 好きな人がいるなら 再婚すればいい。 「それで、今週の日曜日 その人に会ってほしいの」 再婚の話を持ち出しのは そういうことか(苦笑) 『わかった、空けとくよ』 龍煌に断られたから 大した予定もないしな。 「ありがとう。 そうそう、私より十歳下なの」 まぁ、年の差なんて 気にしなくていいと思うよ。 『別に年下でもいいじゃん』 そんなこと言ってたら 俺達なんて一回り以上違うし 母さんの方が歳が近い。 だけど、気にしたことはない。 この時はまだ知らなかった…… 母さんの再婚相手が龍煌の“弟”だとは。 待ち合わせ場所はデパートのレストランだった。 「実は、彼のお兄さんも来るのよ」 『そうなんだ。 そういえば、馴れ初め聞いてないや』 よく考えれば何処で出会ったんだ? 「ブランジェリー・Snow Whiteって パン屋さんの職人さんなのよ」 パン屋か。 母さん、パン大好きだもんな。 『母さんが先に好きになったんだろう?』 なんとなくそんな気がした。 「何でわかったの!?」 やっぱりな。 『母さん、わかりやすいからな』 「息子に気付かれたなんて照れ臭いわね」 幸せそうでよかった。 「着いたわよ」 母さんが足を止めた店を見て 一瞬、ほんの一瞬戸惑った。 その店は先々週、 龍煌と来た店だったから。 先を歩く母さんについて行くと そこには龍煌と若い男性がいた。 「紫音、彼が恋人の 古居啓毅さんよ」 彼の隣にいるということは そういうことなんだろう。 店を見た時の嫌な予感はこれだったか…… 『初めまして、園田紫音です。 母がお世話になってます』 「古居啓毅です。 隣にいるのは兄の古居龍煌です」 これは、どうすればいいだろうか……? 龍煌のことはよく知っている。 付き合って七ヶ月。 向こうも俺のことは よく知っているだろう。 さて、初対面のフリをするか 此処でカミングアウトするか…… チラッと龍煌を盗み見ると やっぱり、考える仕草をしていた。 目が合うと名前を呼ばれた。 『紫音』 龍煌の奴、考えるフリだったか。 「兄さん、彼のこと知ってるのか!?」 母さんと弟さんが吃驚している。 『勿論だ。 紫音のことならなんでも知っている』 だろうな。 『龍煌、それなんか違うだろう』 間違っちゃいないが言い方がな…… 違う意味に聞こえるのは 俺がそうい思考にもっていくからか? まぁいいか(苦笑) 「二人はどういう関係?」 母さんの質問はもっともだろう。 一見、接点なんてなさそう俺達。 「由姫梛さんのいう通りだよ」 弟さんも加勢してきた。 『恋人だ』 龍煌が答えた。 母さん達と同じということだ。 『因みに、俺達の出会いは 毎朝乗る電車の中だ』 先手を打ったな。 『そういうことだよ(苦笑)』 二人は喋らなくなった。 発する言葉が見つからないんだろう。 『紫音、マンションに帰るぞ』 放心している二人の横を通り、 俺の方に来ると手を掴んで店を出た。 タクシーに乗り、マンションに帰って来た。 『まさか、紫音が来るとは まったくもって思いもしなかった』 その科白そっくりそのまま返すぜ。 『俺もだ。 ただ、母さんがあの店の前で 足を止めた時に嫌な予感がしたんだ』 予感的中だぜ。 『とりあえず、着替えようぜ』 予備の服は置いてあるし、 龍煌も日曜日なのに 何時までもスーツじゃ嫌だろう。 『そうだな』 ラフな格好に着替えた。 『母さん達、帰れたかな?』 『大丈夫だろう、 子どもじゃないんだし』 それもそうだな。 俺は泊まることになった。

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