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うきうきわくわく宝探し

「じゃあみんな、事前の打ち合わせ通りよろしくね」 俺は今生徒会室にいる。今日は連日準備に走り回っていた新入生歓迎会だ。 例年の鬼ごっこから一変し、今年は学園を使った宝探し。宝の地図を模したスタンプラリーカードを埋めつつ宝を見つけていく。各学年が一つのチームになり、力を合わせないと答えが出ない。学園の至る所には俺達生徒会や、学園の先生が待ち構えていてクイズを出題する。 「そろそろスタートをするから真斗達は教室に戻ってね」 生徒会とはいえ真斗や鷹、渚くんは新入生。今日はみんなと一緒に宝探しに参加してもらう。 チーム決めは事前にしてあり、まずはチーム全員が合流するところからスタート。あらかじめ一年生にはランダムなスタート位置の書かれた宝の地図を配ってある。合流出来たチームからスタート地点を目指して宝探しの開始となる。 「じゃ、俺達も持ち場に行くか」 「誰が最初にゴールするかなー!」 「レイラはあんまはしゃぎ過ぎるなよ」 騎麻に名指しで釘を刺されたがそれは無理かもしれない。だってこれは新生徒会の初任務であり、しかも宝探しの発案者である俺が初リーダーをしたイベント。はしゃがないわけが無い!! 俺の持ち場は校舎側の食堂。 「カズマ!モリー!今日はよろしく!!」 「はい!がんばりましょう!」 「任せとけい!!」 元気に返事を返してくれたのは今日の俺の相棒。天羽学園の料理人の須藤和馬と的場杜人の二人。 「TOKIWAで鍛えた腕を見せてやりますよ!」 二人は勿論この学園で働く料理人達はみんな、TOKIWAの経営するホテルで何年か料理人の経験のある人間ばかり。TOKIWAのホテルはどこも最高ランクなので、そこで働いていたみんなの腕も最高峰。 普段はあまりゆっくりと生徒と関わることの無い料理人だけど、折角なので今日は手伝って貰うことにした。 俺達食堂組がここで出題するクイズの問題は、『食堂で一番美味しい料理はなーんだ!』 約40種類のメニューがある中で、一番美味しい料理を答える。そしてその答えた料理をカズマとモリーがその場でつくり、答えた生徒はその料理を完食する。完食した所で正解ならスタンプと次の目的地のヒントがもらえる。 え、そんな問題の答えがあるのかって?まあまあそれは見てたらわかるよ。 「一番美味しい料理はなーんだ!」 「ハンバーグ!」 スタート地点に食堂は入れていなかったので、最初のチームがやってきたのは歓迎会が始まって30分程経った頃だった。 「はい!召し上がれ!」 「え、もう出来たの!?」 「早っ」 「美味そー!」 5分も待たずに出てきた料理に驚きの声が上がった。料理を運んできたカズマのドヤ顔がすごい。 流石男子高校生というのか、熱々のハンバーグはほんの数分で見事に完食された。添えてあった野菜も綺麗になくなって戻ってきた皿につくったカズマも嬉しそうだ。 「はいよ、豚カツお待たせー!」 すぐ隣では数分遅れで来たチームにモリーが豚カツを出している。そちらのチームの皿からも気持ちがいい程あっという間に豚カツが消えていく。 「うん、OK!2チームとも正解!!」 OK!正解!合格! だってこの問題の答えはみんながそれぞれ思う一番美味しい料理を答えてくれれば、それが正解なのだ。 間違いなくこの学園の料理人のつくる料理はどれも美味しい。その中でどの料理が一番なんて、人それぞれだと思う。 それはつくる料理人側からしても感じるものがある。目の前で自分がつくった料理を美味いと言って食べてくれれば、それより嬉しいことはないだろう。

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