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第32話
ありがとうございます、とカップを受け取った崇に何も声を掛けない敏樹は、物憂げにお茶を飲んでいる。
余計なことをいったかな、と崇が後悔し始めた時、敏樹が口を開いた。
「結愛に冷たくしてる自分は、自覚してるよ」
「えっ?」
だってそうだろう、と敏樹は苦し気に吐き出した。
「自分の妹が、結愛が僕の最愛の人間を手にしてるんだ。これって、何かな。嫉妬、というものなのかな?」
「敏樹さん……」
「好きなんだよ、崇くん。君の事が、どうしようもなく好きになってしまったんだ」
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