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第1話 怪しい香水

俺の名前は天野文字(あまの) 天魔文字(てんま)と言う名前である。 何の取り得も無い俺は親からは「完全に名前負けしてるわね」と言われたりした。 そんな俺でも、唯一の特技は【勉強】だった。 そして、俺は勉強をして勉強をして教師と言う職に就いた。 でも、現実はそう甘くは無い。 俺が主任したのは男子校。 暑苦しい男達は俺の話等微塵も聞くつもり等無いのだ。 「はぁ・・・学校やだなぁ。」 「そこの、お兄さん・・・ちょっと、こっちへおいで・・・。」 「えっ?  あの、俺に何か御用ですか?」 「そうだよ・・・この、香水を使うと良い。  きっと、アンタに幸せを訪れるだろう。  料金は1000円だよ。」 「や、安い・・・。」 俺は迷わず払った。 幸せが訪れるのなら安い物だ。 俺はその場で香水を振った。 気付いた時にはお婆さんは居なくなっていた。 「あれ・・・何処に行ったんだ。」 俺はあまり気にせずに学校へと向かう為に歩き出した。 十数分程歩いて学校に着く。 男子生徒が後ろからやって来て俺に挨拶をする。 俺も適当に挨拶をして職員室に向かう。 「おはようございます。  天魔先生、今日は何だか不思議な臭いがしますね。」 「そ、そうですか?」 「えぇ、何だか不思議な臭い。  あ、わかりました香水つけてますね?  嗅げば嗅ぐ程良い匂い・・・・。」 同僚の桜庭文字(さくらば) 尚樹文字(なおき)が俺に顔を近づけてトロンとした顔をする。 自分の匂いを嗅いでみるが俺には何も臭わない。 小首を傾げていると他の同僚も近づいてきて俺の匂いを嗅ぐ。 「あ、本当だ。  何か良い匂いがする。」 「どうしたんですか?」 女性の先生が近寄ってきて興味津々そうな顔をしている。 桜庭が説明して彼女も俺に顔を近づけるが小首を傾げる。 「ん?  確かに良い匂いですけど・・・香水って言うより洗剤の匂いの様な気がするんですが。」 「え、絶対に香水だと思うんだけどなぁ。」 「俺も臭いしないんだけど。  そういえば、此処に来る途中にお婆さんから香水を1000円で買ったけどその臭いかな?」 話は少しの間盛り上がったけれどホームルームが始まるチャイムが鳴り各自持っている教室に向かう。 俺が持っているのは2年A組だ。 教室に入ると生徒達が騒ぎ出した。 「天魔~。  何か今日、超良い匂いじゃん!」 「そ、そうか?  俺自身何も臭わないんだが。」 小生意気そうな式部 斗真が身を乗り出して俺に話しかける。 俺には何も臭わないが皆には香りは届いている様だ。 「おい、何でセンコーが香水なんかしてんだよ。」 この学校で一番強いと言っても過言では無い男。 塔野 篤郎が机に足を乗せて俺に話しかける。 そんな事言われたら俺はどう返答したら良いのだろうか。 謝るべきだろうか。 「えっと、ごめんなさい?」 疑問形になってしまった。 すると、再び生徒達が騒ぎ出した。 「可愛い」「なんか、色っぽい」等と意味の分からない事を言ってくる。 塔野は赤面をして口を手で抑えている。 式部も固まっている。 「せ、先生っ・・・それはダメだよっ」 このクラスでは一番まともな生徒の由良城 真由が耳まで真っ赤にしながら立ち上がる。 他の生徒も同じようだ。 俺は一体何をしたのだろうか。 何かをした記憶は俺には一切無い。 小首を傾げ乍ら俺は出血を始める。 二分程掛けて出欠を取る。 欠席者は居ない事を確認してホームルームは終りだ。 俺が教室を出た瞬間に教室はどよめいた。 「何だったんだ?」 俺は首をかしげて職員室に戻る。 すると、先程まで話していた桜庭が話しかけてくる。 「天魔先生、さっきより臭いが良い臭いになってる。」 「そうなんですか?  俺にはあんまり分からないんですが。」 「こんなにいい臭いがしているのに勿体無いですね・・・。」 そんなに良い匂いなのなら俺も臭いをかいでみたいものだ。 天魔はこれから起こるお尻の喜劇には気付く様子は無い。

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