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第10話 香水が効かない男 part2

和泉はチラリと俺を見てムスッとして弁当を閉じた。 あれ?もしかして俺の言う事聞いてくれたわけ? 少し嬉しい気分になり思わず笑ってしまった。 すると和泉が苦虫を噛み潰した様な顔をした。 「何ですか先生。  気持ちが悪い・・・。」 「気持ち悪いって・・・酷いっ・・・。」 「なっ・・・ガッツリ落ち込まないでくださいよウザいなぁ。」 言葉一つ一つに毒が入っている。 うぅっと唸るとさらに暴言を吐かれた。 こんな事は日常茶飯事だけれど生徒が俺の言う事を素直に聞いてくれたのは初めてかも知れない。 それほど俺は舐められているのだ。 授業はそれからは順調に進み直ぐに終了のチャイムが鳴る。 和泉は終始、俺の事を睨み続けていたが無視していた。 「先生、香水でも付けてるんですか?  凄い香水臭いです。」 和泉の発言に俺は目を見開いた。 男なのに香水が効いていない。 和泉の腕を掴み人気のない所まで連れていく。 そして、和泉に質問を投げかける。 「俺の事・・・どう思う?」 「はぁ?  いきなり何なんですか。  先生の事は頼りなくてウザくて言う事聞くだけ無駄だなと思っています。」 思っていたよりも辛辣だった。 ぐっと泣きたい気持ちを抑え込んで俺は口を開く。 それ以上に喜びが俺の悲しみを超えていった。 「本当にそう思ってるんだな!」 「はい、思ってます。  何なんですか?」 「いや、知らないお婆さんから香水を買ってから男に尻を掘られるから。」 思わず俺は暴露してしまった。 「後悔先に立たず」上手い言葉を作ったものだ。 今の俺はまさに上記のことわざの通りである。 和泉は絶句している。 俺も絶句している。 数秒、沈黙が流れた。 「マジで言ってますか?」 「ま・・・・まじ・・・。」 「先生、そんな顔をして・・・・。」 「いやいや、俺の意志じゃない無いから!」 軽蔑とまではいかずとも和泉は困惑を隠せない様だ。 それもそうだろう、教師が生徒にケツの穴を掘られているのだから。 「でも、どうして俺には効かないんですかね?」 唐突に和泉がそんな事を口にした。 何て切り替えの早い子なのだろうかこの子はと感激した。 確かに俺もそれは気になる。 「そ、それも気になるけどさ・・・さっきの事はもう良いのか?」 「別に良いんじゃないですか?  偏見するつもりはありませんし・・・先生がそれで良いなら良いんじゃないですか?」 「和泉・・・・。」 「な、なんですか・・・。」 「心の友よぉぉぉぉぉお!」 「ちょっと、その青色の猫型ロボットが出てくるガキ大将みたいな事言わないでくださいよ。」 和泉の腰に抱き着き俺は泣き叫ぶ。 何ていい子なんだお前はぁ。 と、叫びながら抱き着いていると和泉は俺の頭を掴んで引き剥がそうとする。 それが数分続いてチャイムが俺達の頭上で鳴り響いた。

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