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第9話

 海は女子制服に着替えながら、昨日のことを思い返していた。 『おじさんに会いたくなったら、またこの車両に来てね』  ぶるっ、と震え、首を振る。  だが、それだけで、前が張り詰めだしている。 「どうかした?」  永亮が、声をかけてくれる。  永亮が。  永亮が、そばにいてくれれば……! 「ね、永亮。今日、部活休めない?」  一緒に電車に乗って欲しい、という海に、永亮の返事は残念だった。 「今、レギュラーメンバーの選抜時期なんだよ。ちょっと、厳しいな」 「そう」  いいんだ。  永亮は、僕よりサッカーの方が大事なんだから! 「バイバイ!」  早口で言い捨てると、海は一人で教室を出て行った。

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