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第壱話 : 花から花へ

今日は休講があり予定してた時間よりも早く 家に着いた。 綾女が食べたいって言ってくれたハンバーグを作るためにスーパーで買い物をして今やっと 玄関に着いたところだった。 綾女は僕が小学からずっと一緒にいた幼馴染で 高校までずっと友達で進学する大学も一緒だった。でも……その関係を壊したのは綾女からだった 高校三年最後の日に僕は綾女といつもの様に 帰っていた何故だか 綾女がしきりに公園に寄りたがり 仕方なくついて行ったのだ。 時刻は5時もう夕暮れで公園には誰もいない 公園のスピーカーからは懐かしい 夕焼け小焼けの歌が流れてきて 世界が全てオレンジ色になった時、 綾女が大きく息を吸って口を開いた。 その時の言葉を今でも覚えている_ 「笹木 雪夜!!俺と付き合ってください!!」 その時の綾女の必死な表情と緊張で上ずった声震えていた手のひら全部昨日のように覚えている。 でも、綾女はそんな事きっと忘れてしまっているんだ。 だって今も、玄関を開けたら知らない靴がある 綾女は最初は優しかったでも、だんだん僕に 飽きてきたのか他の子ともそう言う事をするようになった。 最初はすごく悲しくて真剣に怒って泣いた。 あの頃が懐かしい今はもうそっかの一言で 終わらしてしまう涙はもう出てこなかった。 きっと泣きすぎて涙腺が壊れたのかカラカラに乾いてしまったのかきっとどちらかだ。 僕はそっと部屋の扉に手をついた。中からは綾女ともう一人の喘ぎ声が聞こえた。 女の人にしては低く、くぐもった声で、 少しヒヤッとした。 まさかと思って扉の隙間から覗く 嫌な予感ほどよく当たるもので、 相手は僕よりも華奢で可愛い男の子だった。 綾女の事を「先輩」って呼んでたから きっと一年生だ。 今までは女の人だったから仕方ないと思った。自分に無いものが彼女達にはあるから仕方ないと諦めた。でも、なんで!! 男の子なら僕も同じなのになんで……、 すごく負けた気がした。 女性なら諦めが大きかった。 でも同性で浮気されるともう無理なんだって 僕じゃダメなんだって思い知らされた。 そこにいるのが辛くて無我夢中で家を出た 玄関を閉めてきたかも覚えてない もう、何も考えられなくなってただぼんやりと 歩き続けた。 歩き続けて最終的にはあの日の公園についた フラフラとベンチに座りぼーっとした。 どのくらい時間が経ったんだろうか 周りはもうオレンジ色で公園の時計を見ると 時刻はあの日と同じ5時だった。 誰もいなくてあの頃よりも錆びついた スピーカーからは音のおかしくなった 夕焼け小焼けの歌が流れた。 もう涙は出ないと思ったでも、 僕の頬には涙が伝う感触があった。 それを理解してからおかしくなったように ボロボロと声を殺して泣き続けた。 もう、心が疲れきってしまった…… やめようこんな無意味な事…… 綾女は僕を必要としていない それに僕の代わりはいくらでもいるんだ もう、僕が泣く必要もないし 綾女も無理に僕と付き合う必要もない そう考えると心にあった負荷が少し軽くなった気がした。

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