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第33-1話上達し過ぎたケイロ
◇ ◇ ◇
ケイロにバスケ漫画を見せたのは、ある意味正解だった。
バスケがどんな球技で、どんなことをすればいいのか、大体理解してくれた。高校三年の全教科書を暗記して、テストで良い成績を出せるほどだ。憎らしいほど頭が良い。
昼休みや放課後に一対一でバスケをしたら、そりゃあもう華麗なドリブルで俺をあっさりとかわし、ド派手にダンクシュートをかましてくれた。
スゲーよ、漫画読んだだけで……球技大会レベルじゃないからな、それ。
これで本番も大丈夫と俺は太鼓判を押したんだが、ケイロは納得しなかった。
「もう少し付き合え。やっと楽しくなってきたところだ……太智、あの鼻息荒くフンフン言いながら全方位防御する技をやれ。俺が抜いてやる」
「漫画のアレか! 現実じゃできないヤツだから。無理だからっ!」
「なんだと?! 左手は添えればいいと呟けば、ゴールできるというまじないは有効的なのに、物理の防御は非現実的とは……」
「あれは魔法の呪文じゃねぇよ! ゴール狙う時のコツを忘れないように呟いてるんだよ!」
大体のルールも技術も身に着けたけれど、漫画の内容が全部本当にできることと捉えてしまった点だけは失敗だったな、と思う。俺のツッコミが追い付かない。
そんな漫才染みたやり取りを繰り広げていたせいで、いつの間にかクラスメートからケイロの相棒認定されるようになってしまった。同じ野球部にいるヤツからは「よっ、百谷の女房役」なんて言われたりもした。
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