118 / 121
第65-1話仮初めがガチになる瞬間
小さく苦笑してから、俺は息を吸い込んだ。
「そこまで! ほら気が済んだだろ? このまま戦い続けたらお前らの望みが叶わなくなっちまうから、もう解散! 風の精霊だけ残って俺たちを浮かしてくれ」
俺の声に今度は精霊たちが素直に従ってくれる。
龍がサァァァ……と砂が崩れ落ちるように消え、俺とケイロの体は緑がかった白い光をぼんやりとまとい、深夜の空に浮いていた。
「悪かったな、襲わせちまって……事情はもう分かってんだろ? 俺のこと、つけて来たみたいだし」
ケイロたちの乱入がタイミング良過ぎたもんな。うまく誤魔化せたと思ったのに……俺、体張った甲斐なかったな。エロの経験値が増えただけじゃねーか。
内心頭を抱えていると、ケイロが大きく息をついた。
「ああ……分かっている。太智のことは、婚姻する前からずっと見張り続けていたからな。いつ尻尾を出してもいいよう、王宮内の神官たちに覗き見の魔法を使わせてお前を見張っていた……定期的に国へ戻っていたのは、その結果を確かめるためでもあった」
「ってことは俺の行動、全部筒抜けだったのか?」
「白状すれば、この世界へ来た時から太智を見張っていた。隣人だから動向を気にしておこうという程度だったが……俺たちのことに気づき、観察し始めたから要注意人物として、今の今まで監視してきた。マイラットの息がかかった敵か、俺たちが何かしでかさないかと見張っているのか、それを見定めるために」
おもむろにケイロは左手を上げて薬指を眺める。
離婚が成立したせいで、ケイロの指輪もそこにはなかった。
ともだちにシェアしよう!