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第36話

「さっきから、どうしたんだ?」 「何がですか?」  もしかして、と佐々木はソファの透の横に腰掛けた。 「期待して、来てくれたとか」  さらり、と透の髪を佐々木の長い指が梳く。  ぞくぞくする。 「そんな……」  声に出たのは、否定も肯定もしない言葉。 「嬉しいよ」  佐々木先生の顔が、近づいてくる。  逃げるなら、今のうちだ。  ソファから立って、この手を振り払って逃げるんだ。 「……」  しかし透は動くことができず、そのまま佐々木の唇を受け入れた。

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