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初めてを奪われました※
・ ・ ・
「…っ、……っ…ふっ…んあっ…」
「七海さんは本当に初なフリがうまい」
「……あっ、いや、っやめて…、…やっやだっ…!」
「こんなに簡単に解せるだなんて、すごいな。 今までたくさんの人と交わってきた証拠ですね」
「んっ……っ…っ…んん……っっ」
上下に激しく揺さぶられて意識を取り戻した俺は、今まで誰にも許さなかった大切な場所を和彦に貫かれていた。
半裸の和彦が腰を動かす度にぐちゅぐちゅといやらしい音がして、逃げなければという俺の正常な思考を見事に奪う。
簡単に解せるって何だよ…ただ単に、オナニーする時に自分でイジってるだけだ。 悪いか。
やっぱり和彦は、俺が超尻軽で節操ナシな男だって思ってるんだ。
……違うのに。 初対面の人と初対面の場でエッチするなんて、俺は考えた事もなかったのに──。
なんでこんな事になってるんだろって呆然と天井を見上げていると、憎たらしいほど綺麗な顔が近付いてくる。
「七海さん、もっと動いていいんですよ? 僕に初なフリはしなくていいです。 ちゃんと知ってるんですから」
「な、…に…っ? 何を言って…んのか、分かん、な……ぁぁっ…!」
「可愛いな。 ちょっと奥突いただけで背中が浮いちゃうんだ。 締まりも最高…少し痛いくらいなの、クセになっちゃうな」
「も、…やめ、…っ…やめて…っ」
喋りながらも動きを止めてくれない和彦は、ただただ自身の快楽を追う事だけを優先しているように見えた。
まったくもって不愉快だけど、俺はそんな和彦の背中に腕を回して縋る事しか出来ない。
なんの情もない和彦に抱かれたところで、気持ち良くなんかない。
……ないはずなのに、どうしても下半身は正直で。
なんで、なんで、と頭の中は混乱していながら、拒絶もしないで貫かれて喜ぶ体が恨めしい。
初めてをこんな形で奪われた事も、素性の知らない男に誤解されている事も、大事に守ってきた「初めて」を大切にしてもらえない事も…何もかもが悔しくて、涙が出てきた。
「……七海さん…? 泣いてるの?」
「………っ…ぅぅっ……っ」
「そんなに気持ちいいの? いっつもそうやって涙見せて、男を喜ばせてるの?」
「ちが、う…っ、違うって、言ってんだろ…!」
覗き込んでくる瞳は真っ直ぐで美しいのに、誤解している和彦から発せられる言葉一つ一つが俺の心を抉った。
───なんで? なんで和彦はこんなに、俺の事を誤解してるんだ…?
ほんのちょこっと喋った内容だけで、俺を節操ナシだって決め付けてるの…?
そんなに誤解を与えるほど、たくさん会話した覚えもないのに…?
揺さぶり続ける和彦に抱き締められて頭を撫でられても、行為の延長としか思えないから空しくてしょうがない。
優しい顔をして近付き、優しい声で甘く誘って、警戒心が薄れたところにガブッと首根っこを噛まれた気分だ。
自分でイジってた時とはまるで違う、腹内部まで届く熱に涙が止まらない。
容赦なく腰を打ち付けてくる和彦の表情も、涙で歪んでロクに見えなくなってきた。
「七海さん、僕だけにしませんか?」
「……っ?」
「誰かと共有するなんて嫌だな。 こんなに可愛いなんて知らなかったんですもん。 七海さんは悪魔みたいな人だって聞いてたのに…」
「あ、あく、ま……?」
「そう。 男をたぶらかして、すかさず心を奪い去る魔性の男」
な、なんだよそれ……。
どこからそんな情報が…。
て事は何? 和彦は俺との会話だけで決め付けたわけじゃなく、誰かに何かを吹聴されたって事…?
唖然とする俺を尻目に、逃げられないようになのか、和彦はずっと俺の右肩を掴んで揺さぶってくる。
こんなセックスに何の意味があるの。
誰かに俺のよくない噂を吹き込まれたとしても、和彦には何にも関係ないじゃん…。
「まぁ確かに、一理ありますよね。 この僕が夢中になっちゃいそうですもん」
「ふっ…ん…ん……っんんっ…」
襞を擦り上げ、最奥をグリグリと突いてきながら和彦が薄く笑った。
声が抑えられない。
気持ち良くない、よがるもんか、ってそんな意識を保ってないと、もっと淫らに啼いてしまいそうだった。
愛のないセックスにも関わらず、和彦の腰使いは絶妙で巧みで、ほんとに容赦がない。
俺の事を経験豊富だって勘違いしてる和彦から「動いていい」と言われたけど、どんな風に動いたらいいかも分からない俺が、テクニシャンな和彦の律動についていけるはずがなかった。
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