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5※
外が明るいから、この寝室にも否応なしに陽の光が入ってくる。
恥ずかしいからカーテンしめてと言ってもしめてくれなかった和彦に、体中を舐められた。
それは快感を引き出すというよりも、俺の体を知るための吟味に近く…全身くまなくの丁寧な愛撫だった。
室内はクーラーがしっかり効いてて涼やかなはずなのに、体の芯から火照るせいでじんわりと汗をかいている。
和彦の唇と舌が体を這い回り、穏やかな手のひらがしきりに肌を撫でていて、とてつもない羞恥を呼んでいた。
「そうだ。 七海さん、今さらなんですけど」
「んっ、……な、なに……?」
ぴたりと動きを止めて、ローションを手に取った和彦に足を抱え上げられた。
そのまま俺の足は和彦の肩に担ぐように置かれて、指先を濡らす様をわざわざ見せつけられる。
そんな、……さも今から始めますよっていうの……すごく恥ずかしいんだけど……。
両手で顔を隠すと、和彦の指先が後孔に触れて円を描くように入り口を慣らし始めた。
「僕、七海さんを誤解していた理由がもう一つあったんです。 これは疑いようがなくて、噂を信じてしまった大きな要因なんですけど……」
「……なんだよ……?」
「七海さん初めてだったのに、ここは……初めての感じがしなかったから……」
「んあっっ、……っ……っっ」
ぐちゅ、と自分のではない指が挿入されて、久しぶりの感触に声が抑えられなかった。
───そうだ。 初めての時、和彦はめちゃくちゃ意地悪だった。
俺がエッチに慣れてる事前提で色々囁いてきて、一体何のことを言ってるんだって愕然としたのを覚えてる。
初対面の和彦にそんな誤解をされてるのがすごく嫌で、悲しかった。
でもその誤解は噂だけじゃなかったって事がたった今分かって、顔から火が出そうだった。
「そ、それは……っ」
「初めての感触じゃなかったんです。 だから七海さんが初めてだというのも、すぐには信じられなかった。 ……あれ、今日は……」
指の第一関節が、器用に中で蠢いていた。
その不埒な指先は、ぐりぐりと何かを確かめようとしているみたいに襞を擦り上げる。
首を傾げた和彦は指を一度引き抜いて、ローションを追加した。
……恥ずかしいから、言いたくない。
俺がやってたのは、普通の人のオナニーとは訳が違うじゃん。
体が疼いて寂しくて、ネットでやり方を調べて見様見真似でいじくり始めて五年。
道具を使う勇気はなかったけど、色んな妄想に夢膨らませて指を入れて、ぐちゅぐちゅと快感を探った事は何度もあった。
……あの合コンの日、行く前にシャワー浴びててその流れでいじっちゃったし、……経験豊富そうな和彦にはそれがバレてたって事だ。
マジかよ……それであんなに意地悪な事ばっか言ってきてたのか。
度重なる羞恥に耐え兼ねて目を瞑ると、和彦のトロトロに濡れた指が二本入ってきた。
ぐちゅぐちゅと襞を擦る粘膜音を立てながら抜き差しされ、その指先の感覚が俺の下腹部をおかしくさせていく。
「……んんっ……ね、ちょっ……最初からそんな……動かしたらっ、……!」
「おかしいな。 あの時と感触が違う気がする」
「や、やっ……そ、れ……それ……やめ……っ」
「七海さんの体は不思議ですね」
にこ、と微笑んだ和彦から、後孔への愛撫は止めないまま耳の後ろを舐められた。
いやいや…不思議って言葉で片付けられるのかよ…?
俺の「初めて」発言を信じてくれた和彦は、あの日の疑問さえも自身の勘違いだと結論付けてくれそうだ。
それならそれでいい……、なんて、和彦の香りを全身に纏わせて縋る俺が思うはずもなく……。
穏やかな表情の中で瞳だけは獲物を狙う目付きをした、見た目ほんとに狼っぽい和彦に、俺は白状する事を決めた。
「あ、いや、っ……あの……それは、……」
「はい?」
「い、い、いじってた、から……」
「何をですか?」
「や……だから、……んっ……、一人でするとき、後ろ、いじってた……自分で……」
五年経っても自分では見付けきれなかった秘部を探すべく、くちゅくちゅといやらしく動いていた指先がピタッと止まった。
意味深に見詰めてくる視線から逃れるように再度両手で顔を覆うと、少しだけ沈黙した和彦が納得の声を上げる。
「あ、あぁ……! そういう事ですか……!」
「言わせるなよっ! こ、こんな事……っ」
「……そうだったんですか……。 いじらしくて可愛いですね……。 でも一人でするなんて寂しかったですよね。 これからは僕がたくさんしてあげます」
「た、たくさんはしなくていい……っ」
理解されたと分かると、もっと恥ずかしかった。
あーもうっ、顔が熱いよ! どうにかなりそうだ!
微笑みながら後ろを解してくれてる時も、「気持ちいいですか?」っていちいち聞いてきて羞恥から逃れられない。
……そりゃ、一人でするのは寂しかったよ。 妄想は楽しかったけど、イった後めちゃくちゃ虚しくなるんだよ。
でも和彦にされてると、照れてどうしようもなくなる。
想像なんか目じゃなかった。
声がこんなに出ちゃうって知らなかったし、背中がぷるぷる震えておかしくなりそうになるって事も、知らなかった。
一ヶ月以上も抜いてないせいか、俺のものは痛いほど張り詰めて勃ち上がり、射精の時を今か今かと待っている。
乳首を摘まれて体が強ばり、甘噛みされた時なんかその刺激でイってしまいそうだった。
「んんっ……! ……っ……っ、っ……」
「可愛い……。 乳首も自分でいじってたんですか?」
「……っ! ……ぅん、……」
「やらしい子……」
ひどい。 そんな事言わないでよ。 経験値の差は歴然でも、俺は歳上なんだぞ。
目を開けて抗議しようとしたら、和彦に激しく口付けられた。
舌を絡ませながら腰を動かした俺は、ついに秘部を探し当てられて背中を仰け反らせてしまう。
あぁ───二度目は俺、すぐにイっちゃいそうだ……。
驚愕と混乱に満ちた「初めて」の記憶が、ほんとに塗り替えられようとしていた。
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