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優しい狼に初めてを奪われました※

 逃げたなんて思われたくない。  和彦の自宅にも俺のアパートにも帰らないで、わざわざタクシーを走らせると万超え必至の地元の名前を言ってしまったのは完全に無意識だ。  こんなにあっさり見付かるなんて思ってもみなかったから、どうやってここが分かったんだって聞こうとしても、和彦の顔を見たらそんなのどうでもよくなった。  漫画ではたまに出てきたけど、現実味のない聞き慣れない単語にビックリしちゃったんだからしょうがない。  僕はしつこいらしいので、なんて言ってた意味とはちょっと違うじゃん。  松田さん達の噂話は、和彦とのエッチを知った俺にはすごくリアルに想像出来ちゃうのも当然だった。  俺には使った事がないそれを過去の人達には使ってたと知って、ムカつくのと同時に不安でたまんなくなった。  そんなに刺激的なセックスをしてきた和彦が、ロクに動き方も知らない俺との単調なセックスに満足してるとは到底思えなくて。  何なら俺も飲んでやる。  和彦が俺に飽きちゃう前に、何とか満足してもらえる方法を見付けないとって、頭の中がよく分からない方向へ脱線して沸騰しそうだったから、見つかりにくいであろう地元で頭を冷やそうと思った。  冷静にならなきゃ。 大仕事を終えた和彦に無様な姿を見せてしまう。 ひどい裏切りの果てを見た疲弊した和彦に、全然関係ない事で困らせてしまう。  情けなく詰め寄ってしまいそうな自分を落ち着かせるために都会を離れたのに、……事を終えた和彦は飛んできて、なぜかニヤニヤして喜んでた。  俺のヤキモチは和彦を歓喜させるしかないんだって。  ……どういう意味だよ。 「………………」  和彦がベッドに戻って来てしばらく経つ。  気配はあるのに無言を貫かれて、ほんとにそこに居るのかってだんだん怖くなってきた。  お仕置き✕2を実行中の和彦に目隠しされて、産まれたままの状態でベッドに寝転がってる俺は心細くてかなわない。  ナントカ遮断でいつもより感じるのは確かだけど、沈黙と暗闇は相性が悪いよ。 「か、和彦……っ、居る!? そこに居るっ?」 「居ますって。 ちょっと説明書を読んでまして……」 「説明書!? 怖……っ、和彦、何してるんだよ!」  何なんだ! 説明書って、何の説明書なんだよ!  お仕置き中だから目隠し取ってと言っても笑われて終わったから、ずっとこのままだ。  見えないと、これから何が起きるのか怖くて仕方ない。  和彦の落ち着いた低い声がほんのちょっとだけ安心をくれるけど、説明書っていうのがめちゃくちゃ怖い。 「……電池式なのかな」 「…………!? なに!? 何しようとしてる!?」 「あぁ、いえ。 すみません。 不慣れなもので」  謝って済む問題か!?  何をしようとしてるんだよ!と上体を起こそうとした俺の耳に、鈍い振動音が届いた。  その瞬間、「あ〜バイブね!」なんてホッとした声を上げそうになって口を噤む。 「……和彦っ、良からぬものを使おうとしてるだろ!」 「僕達は「初めて」が多い。 それって素晴らしい事ですよね」 「い、いや、それは時と場合によると思う!」 「え? 七海さんはこれ、初めてではないんですか?」 「初めてだと思う! てか見えないから「これ」が分かんないんだよ! 音で何となく分かる……んんあぁっ」  感慨深げな和彦に猛反発していた俺は、突然の振動を直に乳首に感じて身悶えた。  和彦が開発しようとしている俺の乳首は、オナニーする時に自分で撫でていた程度の感触じゃ感じなくなっている。  先端をチロチロされて、甘噛みされて、弧を描くように乳輪を強く舐め上げられないと、満足出来ないやらしい体になった。 「ん、んぁぁっ、だ、だめ、だめっ、和彦……! やめ……っ」 「どんな感じですか? 僕の舌とはまったく違うでしょう?」 「ぅん、うんっ、ちがう……っ、ちがう、」 「気持ちいい?」 「……っ? わ、わかんな、っ……ぁぁっ……!」 「……気持ち良さそうですね」  生々しい吐息混じりのそれではない、機械的なヒヤリとした冷たい感触と振動は未知だ。  快感を無理やり引き出そうとする継続した動きには、腰が引けた。  落ち着く間がない。  あてがわれたバイブ(多分…)が左右の乳首を行ったり来たりしてる。 「……うーん、……」  どことなく不満そうな声が降ってくると、乳首への振動攻撃は止んだ。 「どんな感じでした?」 「……っ、はぁ、……っ変な感じ……」 「……こっちはどうでしょうね?」 「え、っ? ちょっ、ちょっと待っ……! やぁぁ……っっ」  今度はそれを性器にあてがわれた。  暗闇と沈黙に負けて項垂れた性器が、振動に驚いてピクッと揺れる。  そしてみるみるうちに元気になってきたのが自分でも分かって、顔を覆った。  扱いてないのに、ちょんと触れられただけの振動が性器を、腰を、無条件に揺らそうとしてくる。  ビリビリとした、快感なのか振動なのかが下半身を直撃し、背中がしなって身を捩っても和彦の掌がそれを阻んだ。

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