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第6話
助け舟のはずの翔吾が、逆に煽ることになってしまったのだ。
立つ瀬の無くなった兄は、ますます唇をとがらせる弟のグラスに新しい酒を注ぐと、その肩に手を回し軽く揺さぶった。と、その時。
「手取り足取り、教えてくれるんですか」
「え?」
拗ねた眼をしてこちらを向く凌也の眼は、幼い頃から変わらない色をしている。
「お前がそうして欲しいならな」
「……」
そこでようやく、口の端を上げた凌也だ。
ホッと一息つくと、酔った河瀬が突然立ち上がって歌い始めたので、この話はそこまでとなった。
(何とか助け舟になれたのかな)
賑やかな手拍子に、場は盛り上がっている。
(凌也は……)
ちら、と眼をやると、楽しそうに指笛を吹いている。
よかった、と翔吾はグラスのジンを一口含んだ。
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