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第23話 「幸せ」

別れの時に触れた、君の手 冷たいくせに、無理やり咲かす作り笑顔 電話もするしメールもするのに 一度だって君は、弱音を吐かない 不安を、悩みを話してはくれない 「……何で?」 「?何がです?」 「どーしてこんな展開になった!?」 「だから何がです?」 「最初はラブラブ甘々なのにするつもりだったんだ。何でこうなった。どうしてこんなシリアスな展開になってしまったんだ」 「……」 僕の彼氏は、いわゆる作家と言うやつで 今は絶賛創作中 なかなか構ってはくれないけれど、ふとした瞬間甘やかしてくれるから 文句なんて言えない 「……先輩、ちょっと休憩しましょ。コーヒー入れたんで」 「……うん、ありがとう朱音」 「いーえ」 それに、切羽詰まった時に先輩を止めるのは僕の役目 他の誰でもない僕に、先輩が頼んでくれた それだけで、ほんのちょっとの優越感 「あかねー、ちょっとこっち来てー」 「はい?」 「座ってー」 「?は、い!?」 「あ゙ー、落ち着くー……」 「お、ちつくわけっ」 先輩が僕の膝に頭を乗せる 好きな人がそんなことしてきたら、落ち着くわけないよね!? そんな僕の気持ちを知ってか知らずか 先輩は満面の笑みだ まあ、この顔が見れるなら悪くもないか。なんて、一人で自己完結をしてみるけれど やっぱりドキドキは治まらなくて 「っ、先輩、そろそろお仕事戻りましょ!」 「後もーちょっとぉー……」 「それ五分前も言ってました!!」 「いーじゃぁーん」 「だめです!」 「……頑張れのちゅーしてくれたらやる」 「……はあ!?」 いきなり何を言い出すんだこの人は くっそ、ほんと無理、めっちゃ恥ずかしいし 「ほら、早く」 ああもう、 「っ、すればいいんでしょうっ!?すれば!!」 「……え、まじで」 「目、つぶってください」 そう言って、僕は先輩にキスをした 「……ほっぺ?」 「……頑張れの気持ちは込めましたもん」 先輩の頬に 「ふ、ふふっ、ふはっ、あははっ!!うん、ありがとう。元気でたわー」 「それは、良かったですね」 そっぽ向いて答えるけれど、本当は先輩の顔が見たい だって、今絶対かっこいい顔してる いつもかっこいいけれど、笑ってる時は格別にかっこいいから 写真に収めときたいくらい そんな先輩は、僕の彼氏 こんな日常会話でも、幸せを感じられるくらい 僕は貴方のことが大好きですよ、大夢さん

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