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第34話 「だいすきな、人」

゙朝は珈琲を飲もゔ 一緒に決めた 君はもういないけれど、習慣づいてしまった俺は、また今日も珈琲を飲む ゙カフェインを摂って目を覚ますんだ゙ 朝に、眠気に弱い君が言ったね 俺はすぐに目が覚める質だったからほんとは必要なかったんだけれど ゙でも…苦いの苦手なんだよね゙ じゃあなんで飲もうって言ったのさ ふたりで笑いあったこと、今でも覚えてる ゙いやぁ、毎朝ありがとうございまず 料理ベタな君は、珈琲すらまともにいれられなくて 俺がいつも作ってあげてた ありがとうって、だいすきって、 ずっと、一緒だよって言った君は あっさりと俺の前から姿を消した ごめんの一言すらなく 無表情で 俺を瞳に映さないまま、静かに去っていった ──君と一緒にいたせいで、珈琲がだいすきになってしまったよ それは、忘れたい記憶を一番強烈に思い出させるものなのに 最後の最後まで、珈琲を飲んでいた 俺の、だいすきな、人

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