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第33話 「片想い」

「何で、あの人が好きなのは、俺じゃないのかなぁ……」 そう言ってはらはらと涙を流す君に、俺は、 「かず、俺好きな人できた」 「へー」 「すごくかっこよくて優しい人なんだよ」 「ふーん」 それこの前も言ってたなぁ…なんて その時を思い出して少し心配になる 「……聞いてる?」 「きーてるきーてる」 「ならいいけど。でねっ、今度の人はほんとにいい人なの」 それも前言ってた 「今度ご飯行く約束したんだ!」 「……良かったな」 今度こそ、いい結果になるといい そう思いながら、俺は今日もこいつの話に相槌を打つ 「……かず」 その日は久しぶりの雨だった 突然降り始めた雨に打たれ、急いで帰ってきた矢先 俺の家を訪ねてきたのはびしょ濡れのあいつ 「……とりあえず中入れ。そんで風呂」 「……」 驚きはしなかった だって前にもこんなことがあったから 一度や二度じゃない 何度も何度も、突然俺の家に来る その理由はもちろん、好きになっだあの人゙で 「かず……俺また振られちゃったよ」 「……」 「彼女、いたんだって。……男同士は、気持ち悪いんだって…っ」 振られると、こいつは俺の家に来る 慰める、なんて、不器用な俺には到底出来もしないのに 「…とりあえず、風呂。入れ。……風邪引く」 「……うん、ごめんね」 気にしなくていい、と 言ってやりたいけれど それを言ってこいつは楽になるんだろうか そうぐるぐる考えている内に、話はだんだんと変わっていく その度に、情けなくなるんだ 「かず、お風呂ありがとう」 「ちゃんと温まったか?」 「うん。バッチリOK」 「なら、いい」 「……ねぇ、かず。今日泊まっていってもいい?」 「?そのつもりじゃなかったのか?」 「!うんっ」 何が嬉しかったのか、満面の笑みを零す 好きな人、は大丈夫なのかな 「話、聞くか?」 「……ううん、いいや。大丈夫」 「そっか」 風呂に入って気持ちが解れたのか、落ちるように眠ってしまった そこそこ鍛えてそこそこ筋肉はあるけれど、やっぱりいい歳した男を抱えるのは厳しい けれど、今日はいいものを見れたからいいか、と 心の中で独りごちて、ベットに運ぶ 「……き」 一瞬、起こしてしまったかと思った ちらりと顔を覗き込むと、キラリと光る、涙、が 「……すき」 夢に出てくるくらい好きだったのか、と ならなんで笑顔なんか見せたんだ 辛いなら吐き出せばよかったのに 「……俺でいーじゃん…」 涙を見て、ふと零れ落ちる、本音 「俺にしろよ……」 寝てる間にしか言えない、弱虫のくせに 「好きだ、なぎ……」 お前が楽しそうに話す顔を見るのが好きだった たとえそれが、他にいる゙好きな奴゙の話だとしても 「……何で、お前が好きなのは、俺じゃないんだろうな…」 いつかお前が言っていた言葉 きっと俺、その時お前に恋をしたんだよ ごめんな、なぎ 俺、本当はいつも、お前のこと応援なんてしてねぇよ 俺にしろよって、いつも思ってた 「好きだ」 お前が泣くから 俺だって少しくらい泣いたっていいだろ お前が寝てる間くらい、弱くなってもいいだろ 明日朝起きたら、またいい友人に戻るからさ ちょっとだけ、許してくれよ

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