36 / 50

第36話 「るーと」

ごめんなさい 「……何が?」 「ふふっ、何でもないよ」 「意味、わかんねぇし…」 「わかんなくていいよ、別に」 ずっとずっと、わかんなくていいよ、俺のことなんか お前はなんにも知らずに、ただ幸せに生きてくれればいいよ 俺のことなんか、すぐに忘れていいんだよ 「ねえ、いいこと、教えたげよっか」 「……なに」 「あの子はね、君のことが好きだよ」 「……何で、そんなこと…お前が知ってんの」 知ってるよ だって、俺の目とあの子の目が、一緒だったから わかっちゃうんだよ あの子も俺と同じ気持ちなんだなって お前はいい奴だから、優しい奴だから、あの子もお前のそんな魅力に気付いたんだね 知らないだろうけど、お前結構もてるんだよ? 俺がお前まで届かないようにちょっと邪魔してたって言うのもあるけどね お前はちゃんと、かっこいいんだよ 「自信もって、あの子に告白、してみよ?」 「……しないよ」 「なんで?」 「だって俺、あの子のこと別に好きじゃねぇもん」 「……え」 なに、それ 俺はそんなこと知らない なんで じゃあ、お前は、誰を 「なに勘違いしてんのか知らねぇけど、俺が好きなのはあの子じゃない」 「……え、だって、…でも、」 「一度だって俺があの子を好きって言ったことがあるか?」 そう聞かれたら、答えばない゙だ だって、でも、お前はいつも、あの子を見て ……本当に? 俺がただ、勘違いしていただけ? じゃあ、お前は誰を見てたの 誰も見てなかった? 俺は、なにを見てた? 頭の中がぐちゃぐちゃで、もう訳が分からなくなる 「まあ確かに、好きなやつは、いる」 「え、と……そう」 「ずっと見てた」 「……それだけ聞くと、ちょっと怖いよ」 「確かにそうだな」 人のこと、言えないけど ははって笑う、お前が眩しくて なんだか、遠くて 頭がぐるぐるして、なみだがでそうだ 「気がつくと、目で追ってた」 「……へぇ」 「好きだって思ったのは、いつだったかな」 そんな話、聞きたくないよ 別にいらないんだ 俺の知らないところで、勝手幸せになっててくれていいんだ 耳を塞ぎたくなって でも出来なくて せめてもの足掻きで、お前の顔を見ないように、俺の顔が見えないように そっと、下を向いた 「ま、それはいいとして」 なぁに、まだあるの 「お前に言われた通り、俺自信もって、今から告白しようと思う」 そう、がんばって お前なら大丈夫、うまくいくよ 「そっか、がんばってね、それじゃ、」 「すきだよ、お前が」 「……え」 えっ、と、誰に……言ってんの、それ 顔、あげらんない 俺以外に、ここに誰かいるの 確かめたいけど、怖い もしいたら、俺絶対ここで泣き崩れる 「聞いてんの?お前だよ、流羽」 「っ、」 「……そばに居るのが当たり前になって、どこにいるのか気になって」 やめて 「笑ってる顔が見たくて、泣いてたら抱きしめたくなって」 もう、いい 「ずっと一緒にいたくて、幸せにしてやりたくて」 もう充分だから 「いつの間にか、すげぇ好きになってた」 そんな、幸せなこと あるわけないと、思ってたの 「すきだよ、流羽。俺と付き合って」 もう俺、明日死ぬのかもしれない 顔あげなくても、泣き崩れそう 「……るーう、返事は?」 「っ、おれ、は」 「うん?」 「っ俺のほうが、絶対お前のこと、っ、すきだからっ」 「ははっ、負けねーよ?」 「っ、ゆきが、だいすき、だ」 「……それは、付き合ってくれるって意味でおっけ?」 「、ん」 当たり前、じゃないか 「ははっ、すげー嬉しい」 「……結喜」 「ん?」 「……すき」 そう言うと、ふっ、て 心底嬉しそうに、笑うから 「だいすき」 なんどでも、くりかえす ごめんなさい もう、離れてなんかやれない

ともだちにシェアしよう!