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第3話

 驚いて振り向くと、自転車と共に倒れた男性がいる。 「大丈夫ですか?」  秀一は、身に着いた親切心から男に駆け寄った。 「ああ、ありがとう。平気平気」  男は、秀一より年上のようだった。  しかし、まだ若い。  30代になるかならないか、と思われた。  それより秀一の眼を引いたのは、その格好だった。  よろよろで、埃まみれのシャツ。  背負った、大きなリュック。  裾がほつれ、破れたジーンズ。  街灯の下、その顔が精悍な顔つきでなかったら、さっさと取り残していただろう。  しかし秀一がとどまったのは、何も顔のせいだけではなかった。

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