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第13話

 慶は、大丈夫だよ、とは言わなかった。  ゴミ袋を隅に置くと、テーブルの上のボウルを手にした。 「まずは、食べようか。人間、空腹だとどんどん悲しくなっちゃうからね」  ボウルには、シリアルが入れてあった。 「せめて卵でもあれば、目玉焼きくらい作ったんだけど」  今の秀一の家には、食料と言えばシリアルと牛乳、カップ麺くらいしか置いていないのだ。  そのシリアルも、二人で食べれば無くなった。  今日こそ、買い出しに行かなくてはならない。 「近所のスーパーに出かけるのも、だるいんです」 「重症だな」  今日は慶さんが一緒だから心強いけど、と話した後、秀一は自分の言葉に驚いた。  僕は、慶さんを頼っている。  昨夜、会ったばかりなのに? 「人間、誰かに頼ることも必要さ」  慶は、そんな秀一の心を見透かしたようなことを言う。 「俺を頼ってもいいよ、秀一くん」  その言葉に、秀一の眼からぽろぽろと涙がこぼれてきた。

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