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第22話

 あれからどのくらい経ったのだろうか。  走り続けていた俺は、ある公園の前で無意識に立ち止まった。 そして空いていたベンチに腰を下す。  それから何をするでもなく、ただ暗くなっていく空を眺めていた。  体は脱力してしまって動かなかった。というか、気力が湧かなかった。  ずっとずっと、宵人のことばかり考えていた。否、それしか考えられなかった。  それほど、今の俺に余裕など1ミリもなかった。  「もう...ダメだ...」  「何がダメなの、」  「...っ!?よい、と...」  小さく呟いた時、その原因である声が俺のすぐ後ろから聞こえた。  振り返ると案の定そこには痛々しい傷を顔に持った宵人が静かに佇んでいた。  「なんでここに...っ」  「行かないで!!」  「っ!宵人!?」  立ち上がって去ろうとした瞬間、勢いよく抱きつかれ動きを止められた。  俺よりも力が弱く背の低い宵人は必死に俺にすがってきたのだ。  「ごめんね愛都...っ、僕..迷惑だなんて思っていない!あんなの本音じゃない。愛都を傷つけるつもりはなかったんだ!ただ...愛都を困らせるのが嫌で...。気がついたら勢いであんなこと...っ」  「...。」  「でも、あれから愛都を探しながら考えてわかった...それは自分のただのエゴだって。 僕はバカだ、愛都の気持ちをちゃんと理解していなかった。自分勝手に物事を考えていたんだ」  肩を弱々しく震わせながらそう強く俺に言う宵人の瞳からはいつしか涙がこぼれてきていた。  何があっても泣こうとはしなかった宵人の強い心が今弱まっているのだ、とそこまで追いつめられたのだと...すぐに分かった。  「宵人...俺、おれ...っ」  気がつけば愛都も涙を流していた。男同士で泣いて、抱きつかれて...傍から見れば、ひどい光景だったかもしれない。 だけどやっと本当の意味で宵人とより深く絆が結ばれた気がして、俺は周りを気にすることもなく涙を流し続けた。

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