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第24話
「...今話したのが、全部なのか?」
「うん、そう...だよ」
「なんだよ...っ、お前全然悪くないじゃないか、」
今聞いた話は俄かには信じられないことばかりの内容だった。
辛そうに、時には悔しそうにゆっくりと話す。今まで自分の身に起こったこと...イジメの内容とそのきっかけ。
その酷さに俺はすぐにでも相手の奴らを殴りに行ってしまいたい衝動に駆られた。
「...僕だってそう思ったさ。こんなのおかしいって...」
「...っ」
力なくうな垂れる宵人は酷くやつれて見え、胸を締め付けられた。
そんな宵人をギュッと抱きしめ、腕の中に入れると宵人は俺の胸に顔を押し付け涙を流し始めた。
「お前は俺が守る。あとは俺がどうにかするからお前は安心しろ」
「ううっ、まな、と...っ、まなと、」
部屋に響く宵人のすすり泣く声。俺は宵人を抱きしめる力を強め、なだめるように優しく頭を撫で続けた。
しばらくその状態が続いた後、宵人は泣き疲れたのかそのまま俺の腕の中で静かに眠りについた。
「なんで宵人がこんな目に会わなきゃいけないんだ」
起こさないよう俺のベッドへと倒してやる。
小さな寝息を立てる宵人は痛々しい傷があるものの、安心しきっているのか気持ちよさそうに寝入っていた。
きっとまともに寝たのも久しぶりのことなのだろう。安全なはずの寮には同室者である転校生がいたのだから。
「...くそっ」
先ほど聞いた話がぐるぐると頭の中を回る。
転校生である沙原 弥生という男。全ての不幸はそいつが宵人の同室者になったところから始まったと言っていた。
沙原 弥生は宵人曰く、容姿が良く性格も明るくそいつ自体はいい奴らしい。
だから最初は何の問題もなく、日常が過ぎていった。
しかし見目もよく、明るい性格の沙原のもとには徐々に人が集まっていき、そんな奴らによって宵人はイジメられ始めた。
しかもその理由も「沙原の同室者だから」「沙原といつも一緒にいるから」「沙原を独占しようとするから」と、酷いものだった。
まず、最初の理由。これは一番ひどかった。
同室者だから、と言ってもこれは学校が決めたことであって宵人が決めたことではない。
それに宵人だってこんなことが起こると分かっていれば、同室者になんてなりたくないと思うだろう。
あと二つの理由も宵人にとって不可抗力のことだった。
宵人が言うには、宵人自身はじめは特に沙原と一緒に行動しないで、いつものメンバーと一緒にいたらしい。
しかし、沙原はことあるごとに宵人を誘うようになりいつしか常に一緒に行動するようになった。
そしてイジメの日々が始まった。
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