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第62話
「弥生が食べるなら僕も...食べる。弥生と別々なんて嫌だし、」
「...」
永妻は目線を下げ自棄気味にそう告げ、無言のままの香月とともに席に着いた。
四角い形の4人テーブル。俺の隣には沙原が座っていたので2人はその正面に座っている。
「なんかごめんね。でも、味はそんなに悪くはないと思うから。2人の分の箸とご飯持ってくるね」
「僕も手伝うよ、」
「いや、大丈夫。沙原君は食べてて」
手伝いを申し出る沙原を止め、俺は1人立ち上がるとキッチンへと向かった。
そう言えば綾西は今頃何をしているのだろうか。俺が恐くて部屋に引き籠ったか?
綾西なら1人で食堂に行くこともなさそうだし、多分何か買って食べるつもりなのだろうが。
―いくつか料理を持っていく口実で様子でも見に行ってみるか。
そう考えた俺は2人分の飯と箸を用意すると他に白飯を入れた弁当箱を持った。
そして3人の元に戻り2人に用意したものをそれぞれすぐ前に置いてやると、俺は席にはつかず持ってきた弁当箱へとおかずを詰めていく。
「ねぇ、沙原君。綾西君の部屋の番号教えてもらってもいいかな?」
「え、あ、泰地なら307だよ。もしかしてそのつめたやつ泰地の分?渡しに行くの?」
「うん、そうだよ。たくさんあるし、おすそ分け。俺ちょっと行ってくるね」
「ま、待って愛都君!あの、さっき和史達から聞いたんだけど、泰地今日は用事があって部屋戻るの遅くなるって言ってたらしいよ。
だから今行ってもいないかも...メールも繋がらないから、いない可能性大だよ」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。でも、行くだけ行ってみるよ」
弁当のふたを閉め、てきとうに鞄に入れる。
最中、香月と永妻の訝しげな視線が刺さったが、俺はそれに目もくれずてきぱきと行動した。
「それなら僕も行くよ。泰地の顔も見たいし」
「うーん、でも香月君と永妻君ご飯食べたばかりだし...それに2人とも沙原君に会いに来たんでしょう?やっぱり沙原君はここにいないと。綾西くんには俺からよろしく言っておくよ」
「...そっか、そうだよね。うん、僕和史達と待ってるよ。愛都君の分もおかず残しておくね」
「ありがとう。それじゃあ行ってきます」
軽く手を振れば沙原はそれに笑顔で振り返してくれたが、永妻はガン無視、香月は横目で睨んでくる、と冷たいものだった。
...まぁ、沙原のように笑顔で振り返されても困るし、気持ち悪いだけだが。
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