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第73話

 「...綾西君はわからない。俺は...出されたコーヒーを飲んだら眠くなってしまって。今、目を覚ましたばかりだから、なんとも」  今はとにかく綾西のことだけは隠さなければいけない。耳をすましてしまえば聞こえるバイブ音にくぐもった声。  - これは、最悪だ。とにかく何か話し続けなけて香月の意識をこちらに向けなければ...  「目が覚めたら、その...なんだか体が、熱くて...」  「...ふーん」  香月は愛都のことを爪先から頭のてっぺんにかけて、じっくりと舐めまわすかのようにして見てくる。  特にその視線は下着の中で主張しているそこで止まった。  「...っ」  一歩また一歩と近付いてくる香月の表情はいつしか歪んでしまっていた。  ニヒルに笑いすでに綾西のことなど頭にないようだった。瞳は欲に染まり、濁っている。  頭が回らず、上手い言葉が出て来ないが、なんとか香月の意識をこちらに向けさせることには成功したようだった。  そうなれば最早、愛都の脳内は限界を迎えている身体を今すぐになんとかしたいという欲や衝動に駆られる。  「俺がラクにしてやろうか?」  「ゔぁっ、くぅ...っ、」  目の前にしゃがみ、囁いてくる香月に次の瞬間には昂りを強く握りこまれ愛都は溜まらず呻いた。  痛みと快感を紙一重に感じ、大量の汗が額をつたう。  「つーかさ、その態度どうにかしろよ。ムカつくから」  「...ぁ...やめっ、香月...く、ん」  「泰地と晴紀のことは知ってるような態度なのになんで俺だけ仲間外れにするんだよ。まさかあの時のことを忘れたなんてことはないだろ?あの時一番最初にお前を犯したのはこの俺だ。俺は忘れてなんていない」  「何...言ってるんだよ。俺が...香月君と会ったのは、ここに転校してからじゃ、ないか...っ」  「嘘ついてんじゃねえよ!」  「う゛くっ!...あ゛...」  愛都の性器を握る手が離されたかと思えばいきなり頬を殴られ、受け身の取れない体は床に倒れた。  頬に鈍い痛みが広がる。

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