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第74話
「こう...づき君...っ。君は誰か、別の人と俺を、勘違いしてるよ...」
内心では香月の言動について罵ってやりたいほど、苛立ちが募っているが、なんとか耐えてしらを切り続ける。
ここであっさりキレるわけにはいかないんだ。
「はぁ?勘違い...?んなわけねぇだろ...あぁ、そうか。わかった」
「...あ、やめろっ...!何すん...ッ」
「るせぇ...お前が覚えてないっていうから俺が親切に思い出させてやるんだ。大人しくしてろ。...つっても、今のお前じゃまともな抵抗もできないか」
俺の上に跨り乱暴に服を脱がしてくる香月を止めようと手を伸ばすが、香月の言う通り力が入らず抵抗することができない。
元々俺は綾西相手でほとんどの力を使い切ってしまっているんだ。今、攻められてもやり返すことができないことくらい自分で分かっている。
「いや...だっ」
それでも予定外の香月との行為は何とかしてでも避けたかった。
無意味にこいつらとは身体をつなげたくなかった。こちらに利益があるならいくらでも俺は自分を差し出す覚悟はできている。だけど...だけど今回は...
「触るな!...やめっ、」
肩口に顔を埋められ、強く吸われては丹念に舐められる。それにさえ、快感を拾ってしまう自分の身体。
先程から脳内をグルグルと回っている快感を享受しろという甘い言葉が徐々に強まっていく。
そんな自分が憎くて憎くてしょうがなかった。
「...はっ、エロい身体」
一度上体を上げ、俺を見下ろしてくる奴に俺はきつい視線を向けることしかできなかった。
そんな俺を香月は興奮しきった瞳の中に写し、舌舐めずりする。
そして先ほど俺を犯そうとしてきた綾西と同じようにごくり、と喉を鳴らした。
「すぐに突っ込んでやるよ...前にヤッた時みたいに...激しく、な」
そう言うと香月は再び上体を下ろし、唇を重ねてきた。
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