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第116話

 「あーぁ。愉快、愉快」  自分の思い通りに事がいかず、苛立ち、暴力にものを言わせようとする叶江。  無表情を突き通そうとしていたが、時折不快そうに眉をひそめ顔を歪めさせていた叶江のあの顔が忘れられない。  そのことを思い出せば、傷つき痣だらけで投げ出された自分の四肢などどうってことなかった。  足首まで脱がされたズボン。上の制服は中途半端に脱がされ、Yシャツのボタンはいくつか千切れとれてしまっていた。  最低限、ズボンだけでも穿きそして再び地べたに寝そべる。  全身に広がるあいつがつけた痕。それは所有を示そうとするかのようなキスマークや噛み痕から、殴打のあとまで...さまざまだった。  しいて言うならば尻の間から垂れ、流れ出る自分の血とあいつの白濁だけはどうにも気持ちが悪かった。  慣らしもせずに突っ込まれたせいで先程から突き刺すような痛みがそこを走っている。  乱暴に出し挿れされるだけのそれに愛都自身が反応するわけもなく、3度中出しされる間も当然ながら終始イクこともなく、萎えたままだった。  行為の最中、激しい痛みからあがる悲鳴染みた声。それでも、愛都の中から悦が消えることはなかった。  最後まで叶江の言うことに頷かなかった。  叶江にされるがままの愛都だったが、最後もニヒルに笑って叶江の顔を見てやった。  舌打ちをして、愛都をおいて屋上を後にした叶江の背中が頭から離れない。  やはり、綾西を見捨てないで傍において正解だった。  多少、場合によっては扱いづらい部分はあるがあいつの取り乱す姿を見れるのだと思えば、そんなことも大したことではなくなる。  ― まぁ、例外は綾西だけのつもりだけど。  あとの奴らを救うつもりはない。徹底的に堕としてやる。  しかし、愛都の中で1つだけ疑問があった。  それは沙原のことだ。  ― どこか上手くいきすぎている気がする。  計画通り...いや、それ以上の進み具合にやはり戸惑いを感じる場面も多々あった。  だが沙原が愛都に対して抱くあの歪んだ感情...あれが嘘ではないと言い切れる自信はあった。  ― でもなんか引っかかるんだよな...  働かせる思考。しかし今の愛都にその違和感をつきとめることはできなかった。

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