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第5話
浮き浮きと、鏡の前に立つ。
「姿見があれば、よかったのに」
くるりと、一回転。
腿を撫でるスカートが、軽やかだ。
「どうしよう。写真、撮っておいた方がいいかな」
しかし、不慮の事故でそれを他人に見られたら大変だ。
そこへ、廊下を歩く複数人の足音が聞こえた。
「寄ろっか、喫煙室」
「お前、それ生徒会室の前で言う?」
「いいじゃん。こないだも、吸ったし」
何ということだ。
尊は、自分の今の姿をすっかり忘れて激高した。
「あいつらか! ここでタバコを吸ったのは!」
以前入室した際、室内に煙の臭いが残っていたことがあった。
身内のしたことだとすれば、とんでもない不祥事だ。
尊は煙の残り香を、生徒会室から追い出した。
先生に気づかれる前にと、必死に追い出したのだ。
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