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第37話

 それから10年。 「あぁ~、こっちのスカートにするか、こっちのパンツにするか、悩む~!」 「前の晩から明日の服は決めとけ、っていつも言ってるだろ!」 「決めといたさ。でも、着てみたら意外にシャツと会わないんだよ、この色!」  鏡の前で悩む尊を置いて、海斗は手早く朝食の準備をする。  全く毎朝毎朝、飽きないものだ!  社会のジェンダーレス化は広まり、深まっていた。  女性も男性も、好きな色、好きな素材、好きなデザインのファッションを楽しむようになり、男性がスカートを履いていても奇異の眼でみられない世の中になっていた。 「決めた。スカートにする」 「そりゃ良かった。ちょうど卵が焼けたところだ」  早口の海斗に、尊は不満げな声を上げた。 「何でスカートにしたか、聞かないのか?」

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