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正しい「もふもふワンコ」の飼い方
【はじめてワンコを迎えるあなたへ】
1.温かく見守ってあげましょう。
飼い主として、一番大切なことは、そばにいて見守ってあげることです。
ワンちゃんは、今までの環境と全く異なる、新しい環境に戸惑っています。
時には、心を閉ざして、素直に甘えることのできないワンちゃんもいます。
生涯のパートナーとして、あなたがずっとそばにいて見守っていることを教えてあげてください。
ワンちゃんは、必ず、あなたの愛情に応えてくれます。
2.相手をしてあげましょう。
ワンちゃんは、とっても寂しがり屋さん。
クールに見えるワンちゃんでも、本当は飼い主のあなたに構ってもらいたいと思っています。
一日に一回は、相手をしてあげてください。
軽く頭を撫でる程度でもいいのです。
スキンシップが大切です。
3.気持ちを分かってあげましょう。
ワンちゃんは、自分の気持ちを話すことができません。
でも、尻尾や耳、表情で気持ちを汲み取ることはできます。
どんなにクールな表情をしていても、ウキウキした気持ちは、尻尾や耳に現れます。
正しい知識を得て、心を読む訓練を行いましょう。
4.アメとムチを使い分けてしつけましょう。
かわいいからと甘やかすのは困ります。
甘やかしてばかりだと、飼い主のあなたを蔑ろにし、ダメなことをするかもしれません。
時には、厳しいムチも必要です。
アメとムチをうまく使い分けて、ダメなことはダメだと毅然とした態度で接しましょう。
◇ ◆ ◇
俺、島本彰(シマモトアキ)には、恋人がいる。
名前は、佐倉真咲(サクラマサキ)。
11年間の長い片思いの末、信じられないような色々な出来事があって、晴れて恋人になった。
信じられないような色々な出来事……100人中100人が信じないような奇想天外な出来事だった。
その出来事というのは、一言で言えば、
5年前に死んだはずの想い人が、ワンコになって自分のもとに戻ってきたというものだ。
その事実を、あの世?で、関西弁のやたらとガラの悪い女に告げられた。
荒唐無稽な話にもかかわらず、すんなりと信じることができた。
というのは、ワンコの桜が、5年前に亡くなった佐倉じゃないかって感じていたからだ。
結局、想いが通じたと思ったら、二人とも5年前にタイムトリップした。
5年前に戻った俺と佐倉は、運命の告白をやり直し、晴れて両想いの恋人となった。
ラブラブな春休みを経て、4月から大学生活を送っている。
佐倉は、俺がワンコの桜が佐倉だったことを知っていることも、
一緒に5年後の世界からタイムトリップしたことも知らない。
俺も、あえて、伝えていない。
隠しているわけではなかったけど、言う必要もないと思ったからだ。
佐倉との新生活は順調だった。
大学生になるまでは……。
「彰? 今日、遅くなるし先に夕飯食べて寝てて」
佐倉は、朝食の皿を洗いながら、俺の顔を見ずに早口で言った。
今日の食事当番は俺。片付けは佐倉だ。
佐倉と俺は、大学進学を機に一緒に暮らしている。
同じ大学だが、佐倉は経済学部、俺は工学部で、校舎も異なり学内では全く接点はない。
「合コン?」
目を合わさないで早口になるのは、やましいときだ。
尻尾や耳がなくても、仕草で佐倉の気持ちは読み取れる。
案の定、俺の言葉にビクリと飛び上がった。
わかりやすいヤツ。
「え? ご、合コンじゃないよっ!!」
「ふーん、合コンじゃないけど?」
「うん、絶対に合コンではないからっ!!」
「だけど、それに準ずるものなんだ?」
「……えーと、えーと、うん。ヤスの家で、鍋パーティしようって誘われて。でも、絶対に女の子になびかないし、そもそも女の子たちは俺に興味ないから大丈夫」
そんなことは、わかっている。
問題は、男だ。
「内訳は?」
「女子2、男は、俺とヤスだけ」
女子は囮に違いない。
早々に女子を帰し、佐倉を泥酔させて襲う気だ。
この前、食堂でヤスってやつを見かけたが、佐倉に気があるのは一目でわかった。
佐倉には、男を惹きつけてやまない魅力がある。
類を見ないほどの整った顔。透き通る白い肌。中性的な身体つき。
そして何より男を虜にするフェロモンが惜しげもなく垂れ流されている。
男なら否応なく、彼の魅力に絡めとられてしまうのだ。
中1から6年間を共に過ごしてきたが、佐倉のことを好きにならなかった男は見たことがない。
かく言う俺も、初対面で佐倉に一目惚れした。
中学校の入学式。
前の前の列のふわふわの亜麻色の髪に桜の花びらがついていた。
教えてあげようと、手を伸ばした瞬間、その頭が動いた。
慌てて、追いかけた。
人の波に見え隠れする頭。なかなか縮まらない距離にイライラする。
強引に人をかき分けて、ようやく声を掛けた。
長い睫に縁取られたアーモンド型の目。通った鼻筋にぽってりとしたピンクの唇。
振り向いた顔は、俺の好みドンピシャだった。
「髪に花びらがついてる。取ってあげるよ?」
ドキドキして、やっとの思いで告げると、緊張で汗ばむ指先で花びらをつかんだ。
亜麻色の髪は、想像したより柔らかくて、いい匂いがした。
「ありがとう。俺の名前、佐倉真咲っていうんだ」
桜の花のような可憐な微笑みに、心臓を撃ち抜かれた。
もう、再起不能。
この瞬間、俺は恋に落ちたのだった。
「同じクラスだよね? よろしく」
襟元のクラス章を示しながら、さらに続ける。
……頭の中がピンク一色になり、悶え死にそうな俺の視界を学ランが横切る。
「え?」
二度見して、ようやく、学ランを着ていることに気付く。
「佐倉って、男の子だったんだ? 可愛い顔をしているから、てっきり女の子だと……」
最後まで、言葉を続けることはできなかった。
顔色を変えた佐倉に、殴られたからだ。
これが俺と佐倉との出会いだった。
親しくなると大抵の奴は下の名前で呼び合うが、俺はそうしなかった。
桜の花びらの初対面を大事にしたくて、佐倉真咲を「サクラ」と呼ぶことに決めたからだ。
「じゃあ、授業に遅れるし、行ってくる!」
我に返ったときには、佐倉は出掛けた後だった。
俺は落ち着かない一日を送った。
大学生だ。鍋パーティくらいは当たり前だ。
何も悪いことじゃない。
行くななんて、束縛する方がどうかしている。
授業は集中できず、学内でも佐倉の姿ばかり探した。
夜になり、イライラはピークに達した。
やっと、終電の時間になった。
迎えに行くのは、許されるだろう。
電車が無くなって困っている恋人を助けるという純粋な思いやりだ。
これは、嫉妬に狂って束縛するような痛い行動とは違う。
自分で自分に言い訳をしながら、電話をかけた。
圏外でつながらない。悪い予感がする。
ヤスの家は、確か大学前のマンションだ。
俺は、財布と携帯をポケットにねじ込んだ。
◇ ◆ ◇
ヤスの家の呼び鈴を連打した。
大人げないし、常識離れなのはわかっている。
でも、心配で仕方がなかった。
5分ほど連打して、やっと玄関のドアが開けられた。
「お前、真咲のツレだろ? こんな夜中に、何か用?」
「佐倉は?」
「奥で寝てる」
「じゃあ、連れて帰る」
ヤスが舌打ちをした。
「このまま、寝かせてやれよ」
俺は、返事をせずに強引に部屋にあがりこんだ。
素早く、部屋の中を見回す。女子の姿はない。
奥のベッドの上で、佐倉が気持ち良さそうに寝ていた。
シャツは乱れて肌が露出し、ジーパンのファスナーは降ろされていた。
その隙間から、下着が先走りで濡れているのが見える。
まさに今、寝込みを襲われていたのだろう。
その瞬間、カーッと頭に血が上った。
こいつ、俺の佐倉になんてことをしてくれたんだ。
握りしめたコブシがぶるぶると震える。
冷静になれと心の声がいう。
二人が恋人だとカミングアウトはしていない。
ここでこいつを殴って、困るのは佐倉だ。
「起きろ」
佐倉の頭を揺すると、「うーん」と薄っすらと目を開けた。
「あれ? 彰? 本物の彰だ。嬉しいな」
すごく嬉しそうな笑顔。
佐倉が素直に感情を表すのは、珍しい。
これは、完全に寝ぼけているのだろう。
めったに見ることのできない、この笑顔と言葉で、一瞬にして今日一日のイライラや怒りが全て吹き飛んでしまった。
我ながら単純すぎて驚く。
仕方がない。惚れたものの弱みだ。
「キスして」
佐倉が首の後ろに手をまわして俺の頭を抱え込んで、甘えた声でキスをせがむ。
こいつ、完全に寝ぼけている。ヤスの家だってわかっていない。
友人の目の前なのに本当にいいのかと一瞬躊躇しかけ、すぐに思い直す。
佐倉が誰のものなのか、わからせる必要がある。
俺は、ヤスに見せつけるように、長くて濃厚なキスをした。
「帰るぞ」
「えっ? どこに?」
「俺たちの愛の巣に」
そこで、ようやく正気に戻ったようだ。
自分がどこにいるか思い出し、真っ赤になって、動揺している。
その横で、ヤスは肩を落として、泣きそうな顔をしている。
決定的な失恋をしたのだ。泣きたくもなるだろう。
「今度、こいつに手を出そうとしたら許さないからな。よく覚えておけ」
耳元で囁き、さらに、追い込んでやる。
ヤスは、震えあがって、コクリコクリと必死に頷いた。
マンションに帰ると、「眠いから明日入る」という佐倉を強引に風呂に入れた。
あの男の痕跡を全て綺麗に落とさないと気が済まない。
ワンコの時にやっていたように、全身を泡で包み、性感帯を刺激しながら丁寧に洗う。
「あっ、彰っ! んっ、そこ、もっと擦って」
佐倉がおねだりをするけど、ワザと知らぬふりをする。
中途半端に高められた体は、相当きついはず。
「ひどい、彰っ、お願いっ!」
色っぽい声に、こっちの下半身もズンと直撃されるが、必死に我慢。
かわいいからと甘やかすのはダメだ。
時には、厳しいムチも必要だ。
「俺以外に触らせるな」
「あ、…あぁ…っ…、そ、そこ、っ、はっ……さ、触らせてなんていない…あ、彰だけっ」
「あいつは触っていた。俺が行かなければ、確実にやられていたな」
刺激を与え、達する直前でやめるということを繰り返す。
もどかしい焦らしが、さらに一歩上まで快楽を押し上げる。
佐倉は、自分ひとりではどうすることもできない悦楽の渦に捕まり絶望的な顔をした。
「ああ、彰、お願い、いかせて……」
「もう二度と、男と二人っきりになるな」
「あっ、わ、わかったからっ。や、約束するから。」
言質は取った。もう、十分だろう。
お仕置きをやめるとご褒美のアメを与えるため、寝室に場所を移した。
「あっ」
佐倉のペニスに舌を這わす。
佐倉は、感じやすい体をしている。
いつも亀頭のくびれを舌で刺激しただけで、すぐにいってしまう。
でも、今日はそれを許さない。
俺はペニスの根元をしっかりと握りしめて射精を防いだ。
「あ、あきっ! い、いかせてよ」
懇願を無視して、窄まりに舌を這わす。
ネチネチとおっさんのように。
つい、この間卒業したばかりのガキのセックスとは違う。
だてに、5年分の年は取ってない。
「あっ、そんなところっ」
ぬちゃぬちゃと、ワザと唾液を垂らしながら、舌先で入り口を刺激した。
佐倉とは、アナルセックスをしていなかった。
まだ、準備が出来ていなかったから。
つまり、男のセックスについて十分な知識を仕入れる時間が足りなかった。
佐倉と初めて繋がるのだから、最高に気持ちよくさせたかった。
だから、ネットだけの情報だけでなく、知り合いの知り合いの薄いツテに縋り付いて情報を仕入れた。
新宿二丁目にも何度も通い、最高のアナルセックスをするために聞き取り調査もした。
もちろん、佐倉には秘密だ。
今日は、その努力の成果を佐倉に見せるのだ。
俺は、匂いも粘度も最高とお勧めされたローションを指にまとい、窄まりに差し入れた。
素早く、前立腺を探し当てて、ソフトに刺激する。
「あ、いい、すごくいい。もう、いれて」
ダメだ。この段階で入れると、切れてしまう可能性がある。
一度、痛い思いをすると体がそれを覚えていて、次回のセックスに影響することもあるらしい。
俺は、2本目、3本目と時間をかけて増やしていき、トロトロになるまでしっかりとほぐした。
佐倉もきつかったかもしれないが、俺も相当きつかった。
途中で何度も挿入してやろうと理性が無くなりかけた。
佐倉に気持ちいい思いをしてもらいたいという、その一点だけで、なんとか堪えた。
「入れるよ」
ズブズブと俺のペニスが佐倉の窄まりに入っていく。
熱い粘膜にペニスが包まれる。
粘膜は小刻みに痙攣し、蠕動をしながら俺を最奥へ導いた。
俺は導かれるまま、何度も最奥にペニスを打ち付けた。
俺だけしか知らない、未通の場所。
もっと、もっと、奥まで届け。
「あぁっ、いい。気持ちがいい」
佐倉、好きだ。
お前は、俺のモノだ。
俺以外の人間についていくな。
みんな、お前を手に入れたがる。
すぐに、お前を連れ去る。
俺が、絶対にそんなことはさせない。
「あっ、彰、もう、出るっ!」
「いいよ、いって。俺も限界……中に出すよ」
佐倉の中に射精した。
俺の精液が、佐倉の中をじわじわと侵す。
このまま、佐倉が俺でいっぱいになればいい。
ウイルスのように自己複製を繰り返し、佐倉の細胞の全てに俺の遺伝子が組み込まれればいい。
放心している佐倉の唇についばむようなキスをした。
落ち着いたのか、佐倉は小さな声で呟いた。
「ごめん。軽率な行動だった。そんなつもりはなかったけど、見せつける気持ちがあったのかも。彰が抱いてくれなくて寂しかった。繋がりたかったのに全然触れてくれなかったから」
息が止まりそうだった。
まさか、佐倉を寂しがらせていたなんて、思いもよらなかった。
愛おしくて大事にしたくて、己の欲望と戦っていたことが裏目に出てしまった。
「俺こそゴメン。佐倉のことが大切だったから、勢いでは抱けなかった」
佐倉の中の俺が、元気を取り戻し再び大きくなる。
ぎょっとしたように、佐倉が身を竦める。
「もう一回、いい?」
困ったような微妙な表情で逡巡したのち、唇を尖らせて怒ったような声で言った。
「すぐに、調子にのって! 別にエッチして欲しいって、お願いした訳じゃないから。勘違いするなよっ! お前なんていなくても、全然平気だから!」
寂しがり屋のワンコは、さっきまでの素直さはどこかにやって、憎まれ口をたたいた。
ワンコが寂しがらないように、思う存分、相手をするのは飼い主の役目だ。
ワンコのために、表情や仕草で的確に気持ちを汲み取り、お世話をするのも飼い主の役目。
時には、アメとムチをうまく使い分けて、しっかりとしつけるのも必要だ。
そして、何より一番大切な飼い主の役目は、生涯のパートナーとして、ずっとそばにいて見守っていくこと。
これからの人生の全てを捧げて、お世話をするつもりだ。
そうじゃないと、気位が高くて素直じゃない俺のワンコは、すぐにへそを曲げてフラフラとどこかに行ってしまう。
ずっと、俺のワンコでいてもらうために……この世界の誰よりもふさわしい飼い主となるために、これからも俺は精進を続けていく。
それはきっと、ものすごくやりがいがあって幸福なことに違いない。
あの希望のない暗闇の5年間は、二度と経験しない。
絶対に、守り切ってみせる。
背を向けて壁とにらめっこしている佐倉をぎゅっと抱きしめた。
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