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Prologue

 降り続ける雨は、まるで街を凍てつかせるかのように冷たかった。  過ぎ行く人々の足は無意識のうちに速くなっていき、人通りの多いはずの場所はやけに少なく感じられた。  だがそこへ、傘も差さずにずぶ濡れの男がよろよろと歩いている。なんとか服を纏っているが、全身に破れがあり、傷が見えるような場所もあった。今にも倒れそうなその男は、歩くのもやっとである印象に感じられた。  あまりの不気味さに、彼の姿を見るなり人々はそこを避けていく。  店の灯りが数多く照らされるその場所でとうとう限界が来たのか、突然バタリと倒れてしまった。  そんな姿になってでも、誰も助けようとしない。まるで腫れ物のようにそこから逃げているようであった。  打ち付ける雨は彼の身体をどんどん冷やしていく。そうしているうちにも、彼の意識は徐々に遠のいていく。 「大丈夫?」  誰もが離れていく中、傘を差した長髪の男がしゃがみ込んで彼に話し掛ける。  ゆっくりとその顔を見ると、柔らかな笑みを浮かべながら彼に手を差し伸べていた。 「俺のところへおいで」  その手に触れようと、男はなんとか手を動かして掴もうとする。  だが、頭上へ持ってきたところで完全に意識が途切れて動かなくなってしまった。

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