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あまり使っていないのか、汚れというよりは埃の方が多かった。それでも、今日から使うのであれば念入りに掃除する必要がある。
霧状になって出ていく洗剤を掛けていき、丹念に擦っていく。
黒いコンロということで目立たなかった汚れは、白い雑巾を真っ黒に染めていった。だが英治は、全く挫ける様子もなく細部まで丁寧に磨く。
「終わったよ。ちゃんとピカピカにしたよ」
史智がそう言って英治の背後から話し掛ける。
本当に終わったのか、と確かめるために、シンクへと向かう。
皿はピカピカになっていた。そしてシンクまでも綺麗に磨き上げられていた。そこまで指示していなかったため、英治の顔には驚きが浮かび上がっている。
「……やればできるんだな」
「まぁね。ご褒美に美味しいもの作ってよ。材料ないけど」
「じゃあ、食べたいもの買って来い。俺はもう少し掃除してる」
「やったー!」
まるで無邪気な子どものように喜びながら、史智は自室へと戻っていく。
これは世話をする方だな、と自らの状況を笑いながら掃除を再開する。とびっきり美味しいものを作るための環境を整えるために英治は張り切っていたのであった。
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