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面倒だ、と顔に出しながら史智は英治と共にキッチンへ向かう。
いつ使ったのか分からない食器がシンクに並んでおり、汚れていることが当たり前という様子であった。
英治から盛大な溜め息が漏れる。
「洗剤は?」
「多分あるはず。そこの下の棚」
シンクの下を開けると、未使用のスポンジと様々な洗剤が並んでいた。英治はそれらを手に取り、史智へと差し出す。
「え~、俺は嫌だよ」
「じゃあ、俺に貸す部屋を掃除しろ」
「使ってないから別に汚くないよ」
「埃は使っていなくても積もる。それが嫌ならお前のベッドを使う」
「あっ、それいいね! 一緒に寝よう」
「……やっぱりやめた。食器洗うの手伝え」
威圧的な視線を向け、史智に指示を出す。
やれやれ、と英治の言葉に従う意思を見せるが、怖気付いた様子は一切なかった。
「で、俺は何をすればいい?」
「皿洗いだ。それなら簡単にできるだろ」
「はーい」
素直に従う史智は、スポンジを濡らして皿を洗い始める。
散らかし放題の男にきちんとできるのか、と若干の不安を覚えつつも、英治は別の洗剤を手に取ってコンロへと向かう。
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