12 / 35
第12話
金か。
携帯から発せられた三ツ矢の声は無機質だったが、第二声には明らかに呆れの色がかかっていた。
「人間界では、いまだに金の力に右往左往する者がいるのだな」
「仕方がないよ。お金は命の次に大切なものだから」
ありがたくもない話だ、と三ツ矢は笑った。
「事情は分かった。私が何とかしよう」
「何とか、って?」
とりあえず、と区切った後、流暢な言葉が流れた。
まるで台本を読んでいるかのような、三ツ矢の提案だった。
「ミチル、お前は明日の夕方、伸彦の母親に宝くじを買うように誘え。俺がそれを、当たりくじになるようにしてやる」
「そんなことできるの!?」
「光の国に要請すれば、可能だ。くじの操作など、簡単だ」
ともだちにシェアしよう!