16 / 35

第16話

 大晦日。  午後も3時を回り、満は壁のカレンダーを新しいものに掛け替えていた。 「電話? 誰だろ、こんな日に」  暮れの一番忙しい時じゃないのかな、と思いながら満は携帯を手に取った。 「伸彦だ!」  そういえば、今日は宝くじの当選発表の日でもある。  三ツ矢が言った、くじの操作が巧くいったのか。  伸彦の母が買ったくじが、見事当選したのだろうか。  答えは、伸彦の第一声で簡単に解った。 「もしもし、満!?」  明るく、弾んだ声。  さすがは三ツ矢先生。  さすがは光の国。  伸彦の家庭は、学費に苦労しなくてもいいくらいに潤ったのだ。  解っていても、満は知らぬふりをして応対した。

ともだちにシェアしよう!